タイトル |
食料生産・消費拡大がもたらす東・東南アジアの水質変動の予測 |
担当機関 |
[分類] |
研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
岡本勝男
新藤純子
川島博之(東京大学)
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発行年度 |
2005 |
要約 |
東・東南アジアでは,人口増加と急激な経済成長に伴う肉消費の拡大により,食料生産・消費に起因する環境への窒素負荷が急増し,中国東部で深刻な水質の悪化が予測される。
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背景・ねらい |
東・東南アジアでは,最近の40年間に窒素肥料の使用量が約20倍に増加した。窒素肥料は農作物の増収に大きく寄与したが,一部の地域では過剰投入により,深刻な地下水汚染や湖の富栄養化が報告されている。そこで食料生産・消費による窒素の負荷,及びその水質への影響を広域的に推定するモデルを作成し,今後の人口増加と経済発展のもとでの環境の変化を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- FAOや各国の統計データに基づいて,食料需給による窒素の負荷量と地下水,河川水の窒素濃度を大陸スケールで推定するモデルを作成した(図1)。
- 東・東南アジアにおける単位陸地面積当たりの平均窒素負荷は,1961年には1.0 t/km2であり,日本と韓国以外での負荷はほとんど自然生態系の窒素固定に起因している。1980年以降,多くの国で負荷が増加し,2000年の平均負荷量は3.6t/km2である(図2)。
- 経済成長に伴って,各国とも一人当たりの肉消費量は著しく増大し(図3),この地域での肉生産量は510万トン(1961年)から7700万トン(2000年)に増加している。肉類消費量の増大はその数倍~十数倍の飼料の生産・消費を意味し,飼料作物の生産が窒素負荷の増加の一つの原因となっている。
- 飼料作物を含む作物生産による窒素負荷の寄与が最も大きく,作物生産に起因する耕地面積当たりの平均窒素負荷量は,0.8 t/km2 (1961年),6.7 t/km2 (1980年),8.2 t/km2 (2000年)と推定される。
- 国連による人口変化,OECDによる経済成長率に関するシナリオに基づいて,各国の将来の食料需要と食料生産による窒素負荷量の変化を見積もったところ,2020年の東アジア域での総窒素負荷量は,2000年の約1.43-1.68倍になると予測される。
- 地下水の推定窒素濃度は経年的に増大し,2000年には中国の黄河,揚子江下流域の畑作地帯で特に高濃度を示す。中国の省および国毎の平均推定濃度は,中国や東南アジアにおける水質調査による地域平均濃度と比較的良く一致した。2020年には,中国東部,東北部の広い範囲でより水質が悪化することが予測される(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- モデルを用いた大陸規模の推定により,食料生産・消費に起因する窒素が水環境へ与える影響の大きさ,水質汚染が深刻な地域の特定,将来の変化の予測を統一的に行うことが可能となる。
- 将来の窒素負荷および水質は,経済成長に加えて,食料貿易の動向,施肥効率の向上,エネルギー需要,環境対策などによって変化するので,各国の実証的なデータに基づいて随時推定することが必要である。
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図表1 |
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カテゴリ |
肥料
環境対策
消費拡大
飼料作物
施肥
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