タイトル |
反射光の偏光特性を利用した作物個体群情報の計測方法 |
担当機関 |
[分類]学術 |
研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
芝山道郎
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発行年度 |
2005 |
要約 |
作物個体群から反射される太陽光を偏光分光放射計で測定して得られる波長別の反射強度および偏光の程度をニューラルネットに入力することにより,イネ,ダイズ,ソルガムおよびコムギ葉群の平均葉面傾斜角,葉面積指数,葉緑素濃度および草高を同時に非破壊・非接触で推定する方法を開発した。
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背景・ねらい |
太陽エネルギーや肥料等資材の利用効率を面的に把握し,農業が環境に与える影響を定量的に評価するためには,さまざまな種類の作物が混在するなかでそれぞれの作物個体群の生産構造と栄養状態を現場または上空から迅速に計測する必要がある。生産構造の指標として,葉群の平均葉面傾斜角と葉面積指数,また栄養状態の指標として葉緑素濃度および草高が重要である。従来は,作物個体あるいはその一部を試料として切り取って計測することが多かった。また葉緑素計,キャノピアナライザなどの機器を利用する場合においても個々の作物葉に触れ,または個体群内に立ち入って測定する必要があった。そこで葉群の平均葉面傾斜角,葉面積指数,葉緑素濃度および草高を一挙に遠隔推定する方法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 作物により反射された太陽光を可視,近赤外域の8波長バンドに分光してその光強度を計測するとともに,作物体表面等で反射される際に生じる偏光(電磁波としての光の振動面の方向の偏り)成分の割合を検出できる偏光分光放射計を用いる。測定波長バンドとして葉緑素の吸収帯,植物の新鮮組織による反射,および水分の吸収をそれぞれ評価できる波長を採用している。この装置自体は当所で保有する既存の特注品であり,本成果は適用対象・目的の拡大とそのための方法に関する新たな知見である。
- 測定は快晴時に作物個体群の近傍から斜め下向きに15°~75°の範囲の15°間隔(5方向),太陽を正面に見る方位で行う(図1)。多くの場合,反射面に対して入射光と反射光が特定の角度関係となる場合に偏光成分が増大する。この測定条件では,概して地面に対して水平に展開する葉面は垂直な葉面よりも反射光中の偏光成分が多くなる。
- 5方向からそれぞれ測定した波長バンドごとの反射の強さと偏光成分の割合とを入力すると平均葉面傾斜角,葉面積指数,葉緑素濃度および草高を出力するニューラルネットワークを開発した(図2)。
- イネ,コムギ,ダイズ,ソルガムを対象としたサンプル実験で,既存の方法として用いた葉緑素計,キャノピアナライザおよびスケールの測定読み値によってこのニューラルネットを調整したところ,上記4種の情報について,決定係数と二乗平均平方根誤差(R2/RMSE)0.75/3.2°,0.76/0.68,0.72/3.1,0.77/8.5cmを得た(図3,図4)。
- 偏光を使うことによりこれまで反射光による推定が困難だった平均葉面傾斜角が推定可能になる。また他の項目に関しては,作物ごとに形態が異なるために,従来は複数の作物種で共通に使える反射光による推定方法が見あたらなかった点を改善している。
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成果の活用面・留意点 |
- 偏光分光放射計は特注する必要がある。また使用装置や作物種が異なる場合,あるいは個別作物種内での精度向上をはかるにはニューラルネットの再調整が必要である。
- 航空機等による実際応用場面では,今回の測定高 2m内外からの実験と比較して対象との距離が大きくなるため,大気や視野範囲の影響を考慮した検証作業の必要がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
肥料
ソルガム
大豆
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