牛由来ベロ毒素産生性大腸菌の性状解明

タイトル 牛由来ベロ毒素産生性大腸菌の性状解明
研究期間 1990~1992
研究担当者 大宅辰夫
中澤宗生
播谷亮
片岡康
末吉益雄
発行年度 1993
要約 牛由来ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)の血清型及びベロ毒素(VT)型を明らかにした。待定の血清型菌は,主に大腸粘膜に病変を形成し下痢を惹起した。VTECは牛の下痢原性大腸菌である。
背景・ねらい 牛の大腸菌性下痢の主要原因は毒素原性大腸菌(ETEC)であるが,近年,
本菌感染症とは病状を異にするVTEC感染に起因する下痢が散発し,原因
菌の諸性状の解明が求められている。一方,VTECはヒト腸管感染症の原
因菌としても重要視されており,特に牛はその感染源として注目されている。
そこで,牛由来大腸菌について,VTECの分布を調べ, 血清型及びVT型
を決定するとともに,実験感染により腸管病原性を検討した。
成果の内容・特徴
  1. 生後2週齢から5カ月齢までの牛636頭の下痢便から非毒素原性大腸
    菌2,544株を分離し,Vero細胞法,抗VTモノクローナル抗体を用
    いた中和テスト及びPCR法によりVTECの検出及びVT型別を実施した。
    血清型別は常法に従った
    (表)。
    結果として,122頭(19.2%)由来249
    株(9.8%)が本菌と同定された。その血清型とVT型との関連は表に示
    すとおりであるが,05:H-,023:H-,026:H11,0111:H‐
    及び0124:H11が分離された症例では,主に大腸粘膜微絨毛の萎縮・
    消失や細胞質膜の異常形態(AE病変)が菌の付着部位に一致して認められ,
    本菌感染と下痢との関連が強く示唆された。一方,038:H21,
    091:H21,0103:H2,0111:H-,0113:H21,
    0145:H-,0153:H25,0157:H7などは,ヒトの症例から
    もしばしば分離される歯型及び毒素型をしており,ヒトの感染源として牛が
    密接に関与していることが推測された。
  2. VTEC05:H‐の腸管病原性を検討するために,子ヤギを用いて経
    口投与実験を行った。その結果,子ヤギは感染約60時間後から粘液様下痢
    便を排泄し,以後120時間後まで持続した。病理組織検査により,投与菌
    は大腸粘膜に定着し
    (図1),
    その部位には典型的なAE病変
    (図2)が形成されていた。したがって,VTEC05:H-はattaching&effacing E.coli
    (AEEC)に属する牛の下痢原性大腸菌であると考察された。
成果の活用面・留意点 VTECが牛の下痢に関与することから,下痢の病原診断においては,本菌
の存在を念頭に置いた検索が必須となった。また,牛はVTECを高率に保
菌していることから,本菌を人畜共通の病原体と認識し,家畜衛生指導にお
いては,環境汚染などに十分配慮する必要がある。
図表1 225542-1.gif
図表2 225542-2.gif
図表3 225542-3.gif
カテゴリ 飼育技術 山羊

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