バリケインにおけるガチョウパルボウイルス感染症の病理学的診断

タイトル バリケインにおけるガチョウパルボウイルス感染症の病理学的診断
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1994~1994
研究担当者
発行年度 1994
要約  ガチョウパルボウイルスを経口感染させたバリケンの特徴的病理変化は骨格筋炎であり,この病変は病理診断指標となることが明らかになった。
背景・ねらい  近年フランス料理用のバリケン(マスコビーダック)の飼養羽数が急増している。バリケンはガチョウパルボウイルス(GPV)に対し高い感受性を有し,1週齢以下の雛ではその死亡率がほぼ100%に達する。GPV感染は,ウイルス分離と血清学的検査によって診断されているのが現状である。病理学的診断指標は,いまだ不明確な部分が残されている。ヨーロッパ諸国ではガチョウのGPV感染症の病理組織学的変化について報告があるが,これらの病理組織学的変化はわが国で発生したバリケンのGPV感染症例の変化と必ずしも一致しない。本研究の目的は,バリケンのGPV感染症例の病理学的変化を明らかにし,病理学的診断の指標として役立てることである。
成果の内容・特徴  わが国で分離されたGPVを1日齢のバリケンの雛に経口投与し,摂取後2,4,6,8,10および12日に2羽ずつ殺処分し,病理学的,血液生化学的およびウイルス学的検査を実施した。雛は接種後6日以降に発育不良を示した(図1)。病理解剖学的には,接種後8日以降,脾臓の萎縮が全例に,また骨格筋の退色が一部の症例に認められた。病理組織学的には,接種後8日から,骨格筋繊維の変性が観察された(図2)。変性した筋繊維の周囲では,偽好酸球,マクロファージおよびリンパ球の浸潤が認められた。接種後10日と12日では,筋繊維の再生像が観察された。これらの骨格筋病変は,舌骨横筋で全例に観察され,胸骨舌骨筋,外側気管筋および大内転筋では少数例に観察された。さらに,接種後4日から10日の間に,舌基部の粘膜固有層および粘膜下組織でマクロファージとリンパ球の浸潤が観察された。そのほか,骨髄,脾臓および胸線に萎縮性変化が観察された。消化管では著しい病変はみられなかった。血液生化学的には、接種後10日以降,クレアチニンキナーゼ値の激増あるいは激減が観察された。ウイルス学的には,接種後6日以降,血清中和抗体価の上昇が観察された。
成果の活用面・留意点  本研究により,バリケンにおけるGPV感染の特徴病変が骨格筋炎であり,この病変はとくに口腔に近い舌骨横筋で高頻度に認められることが明らかになった。この成績はバリケンにおけるGPV感染症例の病理学的診断指標となりうる所見である。なお,ガチョウのGPV感染症例では,心筋炎および肝炎も特徴病変として報告されているが,これらは今回の実験では観察されなかった。
図表1 225560-1.gif
図表2 225560-2.gif
カテゴリ ガチョウ

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