レトロウイルス感染阻止遺伝子の検索

タイトル レトロウイルス感染阻止遺伝子の検索
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1994~1996
研究担当者
発行年度 1995
要約 南アジアの野生マウスの染色体DNAには、レトロウイルスであるマウス白 血病ウイルスのコピーが存在する。それらは同じ群のウイルス感染を阻止する機能を持ったり、感染性ウイル スを発現したりすることが明かとなった。
背景・ねらい レトロウイルスに感染された細胞は、同群のレトロウイルスの2次感染を干渉(阻 止)するという一般的な現象がある。時には個体レベルでこの干渉現象を引き起こす ことがある。Fv-4r 遺伝子と名付けられたマウスの遺伝子はその一例である。Fv-4r 遺伝子は、内在性マウス白血病ウイルス(内在性 MuLV)と呼ばれる、マウス生殖系 列DNAに組み込まれた MuLVコピーの断片である。この遺伝子からウイルスの外 皮(env)を形成する糖蛋白質部分が細胞表面に発現されている。この env 糖蛋白質が 受容体干渉現象に類似の機構でウイルスの2次感染を阻止していると想定されるが、 詳細については不明な点が多い。南アジアに生息する野生マウスは Fv-4r 遺伝子を 高頻度持ち、さらに、Fv-4r遺伝子に近縁な内在性ウイルス遺伝子も多数持っている が、それらが Fv-4r 遺伝子の様にウイルス抵抗性機能があるかどうかは調べられて いない。野生マウスは今まで余り解析されたことはなく、未知の白血病抵抗性遺伝子 が存在する可能性もある。
成果の内容・特徴
  1. MuLV 抵抗性遺伝子の検索。南アジアで採取された2系統(Bgr, Ttg)の野生マ ウス(M. m. castaneus)は複数の Fv-4r 遺伝子に近縁な内在性 MuLV を持ち、かつ 急性赤芽球性白血病を起こす MuLV であるフレンド白血病ウイルス(FLV)に対し抵抗 性であった。これらの野生マウスが Fv-4r 遺伝子以外の白血病抵抗性遺伝子を持っ ている可能性をマウスの交配実験で検討した。野生マウスと FLV 感受性である実験 動物マウス(NFS/N ないし WHT)とを交配し、実験動物マウスへ戻し交配した1世代 目のマウスを対象に、内在性 MuLV遺伝的分離、FLV 感受性との相関を調べた(図 1)。その結果、Fv-4r 遺伝子だけが FLV 抵抗性機能を持ち、その他の Fv-4r 遺伝 子に近縁な内在性 MuLV にはその様な効果は認められなかった。
  2. Fv-4r 遺伝子に近縁な感染性 MuLV検索。7つの内在性 MuLV を持つ野生マウ ス Bgr をそれを持たない実験動物マウス NFS/N に繰り返し戻し交配をして、内在性 MuLV を1つ持つマウス選び(図2)、脾臓から感染性 MuLV分離を試みた。その 結果、7つの内在性 MuLV内(図2)、少なくとも3つ(Frg3, Frg4, Frg6)が感染 性 MuLV を発現できると考えられた。残りの4つの内、1つ(Frg2)は Fv-4r 遺伝子 そのもの、3つ(Frg1, Frg5, Frg7)については、その効果は不明であった。
成果の活用面・留意点
    南アジアの野生マウス集団には、核酸配列では近縁な内在性 MuLV が多数存在して いて、感染阻止遺伝子として働くものと感染性ウイルスを産生できるものが混在して いる事が示された。感染阻止遺伝子として働く内在性 MuLV は Fv-4r 遺伝子以外に は見つからなかったが、それらの遺伝子構造上の違いを明確にすることは、強力なレ トロウイルス感染防御機能を決定する分子機構を理解する上で重要であろう。
図表1 225599-1.jpg
図表2 225599-2.jpg
カテゴリ 抵抗性 抵抗性遺伝子

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