乳頭炎発症牛からのパラポックスウイルスの分離と抗体調査

タイトル 乳頭炎発症牛からのパラポックスウイルスの分離と抗体調査
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1997~1998
研究担当者
発行年度 1998
要約  搾乳牛に乳頭炎が発生し,膿疱からパラポックスウイルスが分離された。分離ウイルスを抗原に用いた寒天ゲル内沈降試験により関東地方の牛について疫学調査を行った結果,50%以上が抗体陽性で,年齢とともに陽性率が増加していた。
要約(英語)  A disease characterized by papules, nodes and vesicles on the teats was seen among cattle. A Parapoxvirus was isolated from a vesicle or a teat of an affected cow. A seroepidemiological survey was performed on antibodies against the isolated virus by an agar gel immunodiffusion test. The positive rate was more than 50% among cattle in the Kanto region, and showed an increased with age.
(Lab. of Viral Ecology, Department of Virology, TEL +81-298-38-7841)
Reference:
Kuroda, Y. et al.: An epidemic of parapoxvirus infection among cattle: isolation and antibody survey, J. Vet. Med. Sci. 61:749-753 (1999)
背景・ねらい   最近,日本各地の乳牛に乳頭炎が散発的に発生し,畜産農家に経済的被害を与えている。牛の乳頭炎は様々な原因で起こるが,その発生状況からウイルス性疾病と思われる症例が多い。これらの乳頭炎について,病因の解明とともに,特異的な迅速診断法の開発が求められている。また,海外悪性伝染病の中には,乳頭や口周辺に水疱や潰瘍を形成する類似した症状の疾病があるため,それらとの類症鑑別を正確に行う必要がある。
成果の内容・特徴
  1. 関東地方の一農家で搾乳牛の乳頭に円形ないし楕円形の白色結節または潰瘍が生ずる疾病の発生があった。発症牛の乳頭病変部から牛胎児筋肉培養細胞に細胞変性効果を起こすウイルスが分離され,理化学的性状及び電子顕微鏡による観察からパラポックスウイルスであることが確認された(写真1)。
  2. 分離ウイルスは寒天ゲル内沈降試験により,今までに国内で分離されている牛由来のパラポックスウイルス3株と共通沈降線を形成した(写真2)。
  3. 分離ウイルスを抗原に用いた寒天ゲル内沈降試験により関東地方三県の牛について疫学調査を行った結果,50%以上が抗体陽性で,年齢とともに陽性率が増加した(表1)。
  4. その他の家畜の抗体保有状況を調べた結果,陽性率は羊で80%,豚,馬はすべて陰性であった。
成果の活用面・留意点
      日本国内の牛は既にパラポックスウイルスに高率に感染していることが示唆された。本ウイルスの感染を受けた牛は不顕性感染で終わる場合が多いが,初産牛や免疫能が低下した牛では,乳頭や口周辺に結節や水疱を発症し,再発する傾向がある。本ウイルスによると思われる乳頭炎の発症報告は最近拡大している傾向がある。国内では,牛,羊,ニホンカモシカの乳頭や口唇およびその周辺に発症した膿胞性皮膚炎からパラポックスウイルスが分離されているが,これらウイルスの異同は明らかでない。野生動物を含めた本ウイルスの生態系を解明していく必要がある。
図表1 225653-1.jpg
図表2 225653-2.jpg
カテゴリ シカ 乳牛

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