鶏ロイコチトゾーン症の感染防御にＣＤ４陽性Ｔ細胞が重要

タイトル	鶏ロイコチトゾーン症の感染防御にＣＤ４陽性Ｔ細胞が重要
担当機関	家畜衛生試験場
研究期間	1994～1997
研究担当者
発行年度	1998
要約	抗ニワトリＣＤ４あるいは抗ニワトリＣＤ８抗体を用いて，ＣＤ４あるいはＣＤ８陽性Ｔ細胞を除去した鶏を作出し，Leucocytozooncaulleryiの感染状況および免疫学的変化を調べたところ，鶏ロイコチトゾーン症の感染防御には，ＣＤ４陽性Ｔ細胞が重要であることが明らかとなった。
要約(英語)	Cell mediated immunity (CMI) is suggested to be important for the protection of chickens against Leucocytozoon caulleryi. To analyze the CMI in more detail, CD4- and CD8-depleted chickens were inoculated with sporozoites of L. caulleryi and the parasitological and immunological changes were examined. CD4-depleted chickens showed a longer parasitemia than those of untreated chickens or CD8-depleted chickens at primary infection. After secondary inoculation with a lethal dose of sporozoites, CD4-depleted chickens showed increased susceptibility, whereas CD8-depleted or untreated chickens showed strong resistance. Serum-soluble antigen, which is a indicator of protozoan propagation, was detected in the CD4-depleted chickens, but not in CD8- depleted or untreated chickens after the secondary infection. These results suggest that CD4+ T cells are important for the protective immunity of chickens against L. caulleryi. (Lab. of Parasitic Diseases, Department of Bacteriology and Parasitology, TEL +81-298-7749) Reference: Isobe, T., Aoki, H. and Tsuji, N. : CD4+ T cell is important for protective immunity against Leucocytozoon caulleryi in chickens. Proc. of 7th Int. Coccidiosis Conf., p.94 (1997)
背景・ねらい	鶏ロイコチトゾーン症は，養鶏産業，特に産卵鶏の生産性に被害を与える疾病として問題となっている。従来，薬剤を用いて鶏ロイコチトゾーン症の予防を行ってきたが，食品の安全性およびできるだけ薬剤を使用していない生産物を希望する消費者ニーズから，薬剤に代わる新しい予防技術の開発が望まれている。その一方法として，免疫を利用した予防方法が考えられる。ロイコチトゾ－ン症に対する鶏の再感染抵抗性は非常に強固で，ごく少量の感染により免疫が付与されると，致死量以上の感染を防御する。その感染防御に細胞性免疫の重要性が明らかにされているものの，詳しい機構については不明な点が多い。そこで，新しい予防技術の開発への一助とするために，更に詳しい細胞性免疫について調べた。
成果の内容・特徴	鶏ロイコチトゾーン症の感染防御に関与しているＴ細胞サブセットを探るため，抗ニワトリＣＤ４あるいは抗ニワトリＣＤ８モノクローナル抗体を鶏胚14日齢から投与して，ＣＤ４あるいはＣＤ８陽性Ｔ細胞サブセット除去鶏を作出し，Leucocytozoon caulleryi感染を行った。初感染において，ＣＤ４陽性Ｔ細胞除去鶏では，ＣＤ８陽性Ｔ細胞除去鶏および無処置対照鶏よりも長い間血液中への原虫の出現（パラシテミア）が見られた。更に原虫を再感染させると，ＣＤ４陽性Ｔ細胞除去鶏では，ＣＤ８陽性Ｔ細胞除去鶏および無処置対照鶏では見られないパラシテミアが見られた（図１）。ロイコチトゾーンに対する抗体は，再感染において無処置対照鶏で高く，ＣＤ４陽性Ｔ細胞除去鶏で低いものの，全群で検出された。しかし，再感染攻撃による血清中への可溶性抗原（血清抗原）の出現は，ＣＤ４陽性Ｔ細胞除去鶏でのみ見られた（表１）。
成果の活用面・留意点	鶏ロイコチトゾ－ン症の免疫を利用した予防方法の開発にあたっては，いかに宿主である鶏の免疫系，特に，ＣＤ４陽性Ｔ細胞を活性化させるかが重要であると考えられる。
図表1
カテゴリ	抵抗性鶏薬剤予防技術