家畜由来腸管出血性大腸菌O157及びサルモネラの各種抗菌薬剤に対する感受性

タイトル 家畜由来腸管出血性大腸菌O157及びサルモネラの各種抗菌薬剤に対する感受性
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1997~1997
研究担当者
発行年度 1998
要約   公衆衛生上重要な家畜由来のO157,サルモネラについて各種抗菌薬剤に対する薬剤感受性を調査したところ,O157は大半の薬剤に感受性傾向を保持していたが,サルモネラについては多剤耐性化が進んでいることが明らかになった。
要約(英語) Escherichia coli O157:H7, Salmonella Typhimurium and Salmonella Enteritidis, are very important causative pathogens of foodborne diseases and were investigated for their susceptibility to 15 antimicrobial agents. Most O157:H7 strains isolated from domestic animals showed high susceptibility to all the antimicrobial agents tested. However a majority of S.Typhimurium strains showed a tendancy toward multidrug resistance. S.Enteritidis strains were a little more susceptible to antimicrobials than S.Typhimurium. In this study fluoroquinolones such as enrofroxacin and norfloxacin were found to be effective agents against both O157:H7 and Salmonella. (Lab. of Zoonosis, Department of Feed Safety, TEL +81-298-38-7815)
背景・ねらい
  サルモネラによる集団食中毒は,腸管出血性大腸菌O157による食中毒に加えてここ数年頻発しており,細菌性食中毒の主要な原因菌のひとつとして公衆衛生上重要視されている。しかしながら,それらの食中毒原因菌の家畜における動態には不明な点が多い。そこで,本研究では家畜由来のO157,サルモネラについて各種抗菌薬剤に対する感受性を調査することにより,薬剤耐性の現状を把握し,今後の防疫対策に有効な情報を得ることを目的とした。
成果の内容・特徴
      供試菌株として,O157については全国のウシより分離されたO157:H7(H-)102株を供試した。サルモネラについては全国で分離された家畜由来株のなかから,S.Typhimurium(ST)120株,
    S. Enteritidis(SE)100株を選択した。薬剤感受性試験は日本化学療法学会標準法に従って寒天平板希釈法により最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。抗菌薬はアンピシリン(ABPC),セファゾリン(CEZ),セファロチン(CET),ストレプトマイシン(SM),カナマイシン(KM),テトラサイクリン(TC),ミノサイクリン(MINO),コリスチン(CL),ナリジクス酸(NA),エンロフロキサシン(ERFX),ノルフロキサシン(NFLX),クロラムフェニコール(CP),ホスホマイシン(FOM),リファンピシン(RFP),トリメトプリム(TMP)の15薬剤を供試した。試験結果については各薬剤毎に算出したMIC50を参考にして,O157,ST,SE,それぞれについて薬剤感受性状況の比較を行った。

  1. 牛由来のO157のMIC値の分布は,表1に示すように全ての薬剤について感受性傾向にあると推察された。なかでもニューキノロン系の薬剤が有効であった。しかし,低率ではあるがABPC,SM,KM,TC,CPに耐性を示す菌株が存在していた。
  2. サルモネラについて,STでは表2に示すようにO157同様ニューキノロン系抗菌薬剤が最も高い感受性を示し,次いでセフェム系,FOMが感受性傾向を示した。しかし,STの感受性はO157のそれと比較して分離年次にかかわらず多剤耐性を示す傾向にあった。また,SEについても有効な薬剤はSTと同様な傾向を示したが,耐性率についてはSTほどの多剤耐性化は観察されなかった(表3)。さらに各表に下線で示したMIC50でSTとSEとを比較するとABPC,SM,TC,CPにおいてSTの方が30倍以上高いことからSEと比較してSTの耐性化が顕著であることが明らかになった。
成果の活用面・留意点
      家畜由来の腸管出血性大腸菌0157は各種抗菌薬剤に対し感受性傾向にあったが,サルモネラについては多剤耐性化が進んでいることが明らかとなった。家畜から分離されるO157,ST,SEなどの細菌が食中毒の原因菌となり得ることを考慮すると,家畜全般について抗菌薬の使用はより慎重でなければならないと考えられた。
カテゴリ くり 薬剤 薬剤耐性

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