アフリカ豚コレラウイルスp32及びp54の発現と診断への応用

タイトル アフリカ豚コレラウイルスp32及びp54の発現と診断への応用
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1995~2000
研究担当者
発行年度 1999
要約   アフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の主要抗原タンパク質p32,p54を組換えバキュロウイルスを用いて発現させた。発現タンパク質とASFV感染豚野外血清及びASFV接種豚経過血清との反応性を調べた結果,診断用抗原としての有用性が確認された。
要約(英語)   CP204L and E183L genes which encode major antigenic proteins p32 and p54, respectively, of the African swine fever (ASF) virus were amplified by PCR and expressed in recombinant baculovirus. Each recombinant protein was recognized as a single band in baculovirus infected insect (SF21) cells by SDS-PAGE. Both proteins, p32 and p54, were detected in SF21 cells and only p32 was secreted into the extracellular medium. These two recombinant proteins were used in Western blot analysis for ASF antibody detection in sera from experimentally infected pigs and field sera collected at ASF World Reference Laboratory (Centro de Investigacion en Sanidad Animal) in Spain. Specific reactions were observed between these recombinant proteins and the test sera, indicating that p32 and p54 are useful as diagnostic reagents for serological tests. Protein p54 showed better reactivity than p32 in antibody detection, especially in the early stage of infection. However, in order to diagnose ASF accurately, both proteins should be used in Western blot analysis. ELISA using recombinant proteins is under development. (Lab. of Diagnosis, Department of Exotic Disease TEL +81-42-321-1441)
背景・ねらい   アフリカ豚コレラ(African swine fever;ASF)は,国際獣疫事務局(OIE)がリストAに指定している国際重要伝染病である。本病には有効なワクチンがなく,感染豚の淘汰以外に防除法がないため,我が国のような清浄国に侵入した場合,甚大な経済的被害をもたらすことが予想される。また,近年,本病の病勢は急性から慢性あるいは不顕性へと移行する傾向にあり,防疫が一段と困難になってきている。国際的な物流の活発化に伴うASFの侵入リスクが高まっている現在,その摘発技術の高度化をはかることは必須である。本研究では,遺伝子組換えタンパク質を応用することによって,ASFの診断精度を向上させるとともに,感染性病原体を用いない安全な血清診断法を開発することを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. ASFウイルスLisbon'60株のCP204L及びE183L遺伝子(それぞれp32,p54をコードしている)をPCRによって増幅後,バキュロウイルス発現ベクターに組み込み,組換えバキュロウイルスを作出した。p32及びp54発現バキュロウイルスを接種した昆虫培養細胞(Sf21)の電気泳動像を調べたところ,組換えタンパク質はそれぞれ単一のバンドとして確認された。また組換えp32は,培養細胞内に蓄積するだけでなく,培養上清中にも分泌されることが判明した。
  2. ASFの国際レファレンスセンターであるスペイン国家畜衛生研究センターに保管されている野外豚血清及びASF発生国で分離された各ウイルス株の抗血清(米国プラムアイランド家畜疾病センターより入手)との反応性をイムノブロット法によって調べたところ,組換えp32,p54ともに特異的反応を示した。また,対照としておいた陰性血清との間には反応は認められず,これらの組換えタンパク質が血清診断用抗原として有用であることが確認された。
  3. 組換えp32及びp54とASFウイルス接種豚から経時的に採取した血清との反応性を調べた(図1)。その結果,感染豚体内においてp32よりもp54に対する抗体産生が早いことが確認され,感染初期の抗体検出にはp54の方が優れていることが示された。
成果の活用面・留意点
      これらの組換えタンパク質単独でも十分診断用抗原として有用であることが判明したが,同じ陽性血清でも反応性に差が認められることが多く,より精度の高い診断を行うためには,2つのタンパク質を併用する方がよいと思われる。現在,多検体処理に優れたELISA法も開発中である。
図表1 225670-1.jpg
カテゴリ 病害虫 飼育技術 防除

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