宿主域拡張型ハイブリッドバキュロウイルスを利用したブタインターロイキン−2 (IL-2)の大量生産技術の確立

タイトル 宿主域拡張型ハイブリッドバキュロウイルスを利用したブタインターロイキン−2 (IL-2)の大量生産技術の確立
担当機関 (現
研究期間 1998~2000
研究担当者
発行年度 2000
要約  ハイブリッドバキュロウイルスを接種した昆虫細胞の無血清培養系を用い高純度のブタIL-2を,また同ウイルスを接種したカイコを用いて大量のブタIL-2を生産することに初めて成功した。
要約(英語)  To use IL-2 and other cytokines for prevention and protection of diseases, suitable mass production technology needs to be developed. Among the baculovirus gene expression systems available, the most popular are the AcNPV/cell culture system, which is easy to handle and the BmNPV/silkworm system, which is expected to have high efficient production. Because baculoviruses have narrow host ranges, we could not use the same recombinant virus for both systems. This time we used a host range expanded hybrid baculovirus (HyNPV) developed in Japan. In the porcine IL-2 gene recombinant virus HyPIL2cp- infected TN5 cell culture fluid, 150 µg/ml of recombinant porcine IL-2 (rpoIL-2) was accumulated with few contaminant proteins. We inoculated the HyPIL2cp- to a silkworm cell line to confirm that the virus could work in the silkworm system. We then inoculated the virus to a 5th instar silkworm. The haemolymph of the silkworm after 4 days of infection contained about 2 mg/ml of biologically active rpoIL-2. We recovered 1mg of rpoIL-2 from one silkworm. For mass production, we inoculated this recombinant virus to 850 silkworms and recovered 500 ml of the haemolymph containing rpoIL-2. We concluded that the HyNPV/silkworm system is suitable for the mass production of livestock cytokines. (Associate Director, Department of Immunology TEL+81-298-38-7875)
References:
1. Inumaru, S. et al.: High-efficient expression of porcine IL-2 with recombinant baculovirus infected silkworm, Bombyx mori. Biotechnol. Bioprocess Eng. 5: 146-149 (2000)
2. Inumaru, S. et al.: Highly efficient expression of porcine IL-2 by hybrid baculovirus in silkworm. Cytokine 11: 958 (1999)
背景・ねらい
 Tリンパ球の増殖因子であるIL-2をはじめ免疫系を調節している様々なサイトカインを用いた家畜疾病の予防・治療法を開発するためにはサイトカインを効率良く生産する必要がある。バキュロウイルス発現系には増殖性と発現効率が良く操作性に優れた培養細胞を宿主として用いるAcNPVとカイコを宿主とすることによって非常に高い発現効率が期待できるBmNPV系があるが,
ウイルスの宿主域が狭いため共用できない。国内で開発された宿主域拡張型ハイブリッドバキュロウイルス(HyNPV)は,この両方の発現系が利用できるため,組換えウイルス構築や力価測定あるいは無血清培地でのタンパク質生産などにはAcNPV系の細胞を用い,大量生産にはカイコを用いることができる。
成果の内容・特徴

  1. ブタIL-2(poIL-2)を生産するためにAcNPV由来の組換えウイルスAcPIL2とHyNPV由来の組換えウイルスHyPIL2cp-を作製し,タンパク質高発現細胞株TN5に感染させて無血清培地で培養したところ,両方の感染細胞から組換え型ブタ
    IL-2(rpoIL-2)が分泌され,感染後4日目で培地中に150 µg/ml程度蓄積した(図 1A)。この場合,培地中の不純物が少ないのでrpoIL-2が容易に精製できる。
  2. HyPIL2cp-をカイコ由来の細胞株に感染させ無血清培地で培養した結果,rpoIL-2の発現が認められことから(図 1B),この組換えウイルスがAcNPV系の宿主とともにカイコでも効率よくタンパク質を発現させ得ることがわかった。
  3. HyPIL2cp-をカイコの5令幼虫に接種したところ体液中にrpoIL-2が蓄積した(図 1C)。感染後4日目ではカイコ体液中のrpoIL-2濃度は約2 mg/mlでカイコ1頭からおよそ1 mg回収できた。これは遺伝子発現系としては最も効率の高いものの一つである。この体液にはIL-2依存性の細胞株CTLL-2を増殖させる活性があった(図 2)。この組換えウイルスを850頭のカイコに接種することにより,約500 mlrpoIL-2含有体液を回収することができた(図 3)。

成果の活用面・留意点
  1. ハイブリッドバキュロウイルス感染カイコは種々の家畜サイトカインの大量生産系への利用が期待される。
  2. 生産された高純度のrpoIL-2は,ブタの免疫機能増強などの臨床応用試験に利用される。
  3. カイコでの大量生産に成功したが,精製法,生産コストについては今後の検討課題である。

図表1 225696-1.jpg
図表2 225696-2.gif
図表3 225696-3.jpg
カテゴリ カイコ コスト 治療法

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