タイトル | ネオスポラの免疫組織化学的診断の高度化 |
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担当機関 | 疫学研究部 |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
山根逸郎 清水真也 谷村信彦 播谷 亮 木村久美子 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 牛流産胎子の各臓器におけるネオスポラ原虫の検出率を調べ、ネオスポラ症の免疫組織化学的診断にあたっては、脳、腎臓、舌および脊髄等を検査する必要があることを明らかにした。さらに、ネオスポラ症の免疫組織化学的診断に適した家兎血清およびマウスモノクローナル抗体を作成した。 |
キーワード | ネオスポラ症、牛、診断 |
背景・ねらい | ネオスポラ症は、ネオスポラ原虫の感染により引き起こされる異常産(流産、死産、早産、新生牛の異常)を主徴とする牛の疾病である。牛のネオスポラ症は届出伝染病であり、その診断は病理組織学的および免疫組織化学的検査によって行われる(病性鑑定マニュアル第2版、農林水産省畜産局監修)。しかし、牛の流産胎子における原虫の分布は明確ではなかった。さらに、従来診断に使用されていた市販の抗ネオスポラ山羊血清には、トキソプラズマとの交叉反応性があること、牛の組織に摘要した場合に二次抗体に起因する非特異的反応が出やすいこと、などの問題点があった。この研究の目的は、ネオスポラ症の免疫組織化学診断に資するため、流産胎子におけるネオスポラ原虫の分布を明確にすること、さらに免疫組織化学的診断に適した抗体を作成することにあった。 |
成果の内容・特徴 | 1. 病理組織学的にネオスポラ症の特徴病変を有する24頭の牛流産胎子において、免疫組織化学的にネオスポラ原虫の検出を実施したところ、24頭中18頭の胎子でネオスポラ原虫が検出された。ネオスポラ原虫の検出率は、脳、腎臓、舌および脊髄で高く、骨格筋、肝臓、肺および心臓では低かった。 2. 日本で分離されたネオスポラのタキゾイトを抗原として兎3頭を用いて免疫血清を作成した。ネオスポラ原虫が感染した牛流産胎子、犬およびマウスの脳を使用して免疫組織化学的検査を実施したところ、ネオスポラのタキゾイトに一致して強い、シストに一致して中程度の陽性反応が観察された。また、トキソプラズマ実験感染豚およびサルコシスティス野外感染牛の組織切片を使用し免疫組織化学的検査を実施したところ、トキソプラズマのタキゾイトに一致して微弱な陽性反応が稀に出現した。 3. 日本で分離されたネオスポラのタキゾイトを抗原としてマウスモノクローナル抗体の作成を試みたところ、ネオスポラに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが2クローン樹立された(表1)。免疫電子顕微鏡法により抗体の反応性について検討した結果、デンスボディーに対する反応性が確認された(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ネオスポラ症の免疫組織化学的診断にあたっては、脳、腎臓、舌、脊髄等を検査する必要があることが示された。 2. 必要に応じて、上記抗体を都道府県の家畜保健衛生所に分与できる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 豚 山羊 |