日本で分離されたニューカッスル病ウイルスの分子疫学的解析

タイトル 日本で分離されたニューカッスル病ウイルスの分子疫学的解析
担当機関 (独)農業技術研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2001~2002
研究担当者 今井邦俊
山口成夫
真瀬昌司
塚本健司
発行年度 2002
要約 これまで日本において分離されてきたニューカッスル病ウイルスを遺伝学的に解析した。その結果、様々な系統の遺伝子型が日本に存在し、それらの多くが海外で分離されたウイルスと極めて密接な関係にあることが明らかになった。
キーワード ニューカッスル病ウイルス、分子系統解析、PCR法、遺伝子型
背景・ねらい 日本ではこれまで多数のニューカッスル病(ND)ウイルス株が分離されてきたが、遺伝子レベルでの疫学的解析はあまり進んでいなかった。しかし、分子生物学的手法の発展により遺伝子データベースに世界各国のNDウイルス株データが蓄積され、世界レベルでのウイルス株の比較が可能となってきた。本研究では我が国で分離されたNDウイルス株について遺伝子解析に基づく分子系統的位置付けを明らかにし、ND発生とそれに関与しているウイルスとの関連を明らかにした。
成果の内容・特徴 1.
遺伝子データベースに登録されている既報のNDウイルスのF蛋白質遺伝子領域から、鶏での病原性に深く関連していると考えられている開裂部位を増幅できるよう、2組のPCRプライマーセットを設定し家禽及びハトなどからこれまで分離されてきたNDウイルス株約70株を供試し、RT-PCRを行った。得られたPCR産物の塩基配列を決定し、得られた塩基配列からアミノ酸配列を推定すると共に分子系統樹解析を行った。
2.
得られた塩基配列からアミノ酸配列を推定したところ、開裂部位の塩基性アミノ酸(R、 K)の集積度と鶏に対する病原性はほぼ一致していた(表)。分子系統解析の結果、これまで国内にて分離されたNDウイルス株は大きく6つのグループに分かれ、遺伝子型(genotype)IV及びV型以外のNDVが国内に存在してきたことが明らかとなった(図に最近分離された株を中心とした分子系統樹を示した)。代表的な国内分離NDウイルス株である強毒内臓型である佐藤/30株はIII型、戦後分離された強毒神経型である宮寺/51株はII型、習志野/68株はVI型に属していた。わが国の代表的な野外弱毒NDウイルス株である石井/62株はI型に属した。この系統は多くが水禽類から分離される弱毒株が属しており、何らかの形で鶏に伝播した可能性が示唆された。
3.
1985年の関東地方のND流行は2系統(VI及びVII型)の株の同時流行であった。しかし、以降日本では2002年の発生までVII型が最近の流行の主流となってきた。しかし、1991年の九州で流行した株(VIII型)もあり、これらの発生には全く異なる伝播ルートが存在した可能性が示唆された。
4.
一方、レースハトから分離された株は全てVI型に属し、外国で分離されたレースハト由来株とも同一系統であった。しかし、ハトのNDウイルス株が鶏に伝播したと考えられるのは脚麻痺鶏から分離されたTY-1/85株のみで、わが国においてはハトNDウイルスが鶏に頻繁に伝播している可能性は低いと考えられた。1997年にパキスタンから輸入されたインコから分離された株はVI型に属し、また同時期に英国で同じく輸入インコから分離された株とそのホモロジーが99%以上であったことから、インコの輸出入によりウイルスが運ばれたことが推測された。
成果の活用面・留意点 本病発生時における感染ルートの追求などの防疫対策に有益な情報として活用できる。
図表1 225758-1.gif
図表2 225758-2.gif
カテゴリ データベース 輸出

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