タイトル | 発育不良豚の肺炎に関与する病原体 |
---|---|
担当機関 | 感染病研究部 |
研究期間 | 2002~2002 |
研究担当者 |
吉井雅晃 久保正法 宮崎綾子 江口正志 山本孝史 小林秀樹 秦英司 池田秀利 播谷亮 木村久美子 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 発育不良豚の肺炎の多くには、農場毎に異なる多種類の病原体が関与し、肺炎罹患発育不良豚の半数近くは豚呼吸器病症候群と診断された。 |
キーワード | ブタ、肺炎、病原体、PRDC |
背景・ねらい | 1990年代以降の豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の蔓延とともに、離乳後子豚の肺炎では主因となる病原体の特定が困難なケースが増加している。北米ではこのような事例を豚呼吸器病症候群(PRDC)と診断し報告することが多い。PRDCの特徴は肺病変部から複数の病原体が検出されるものの、主因となる病原体が特定されず、また各病原体に特徴的な病理像が乏しいことである。我々は発育不良豚に多発する肺炎に関与する病原体を調査し、我が国におけるPRDCの実態を解明した。 |
成果の内容・特徴 | 1. 4県13養豚場の発育不良豚(2~4ヶ月齢)89頭中81頭(91.0%)に肺炎が認められ、離乳後の発育不良に肺炎が深く関与することが示唆された。 2. 肺炎の程度を区分する目的で、肺表面積に対する肺炎部表面積の割合をA~Dのレベルに分けた(図1)。供試豚は肺炎割合の大きいCあるいはDに区分されるものが過半数を占め、3ヶ月齢以上ではDに区分されたものが過半数であった。 3. 肺炎が認められた81頭のうち37頭(45.6%)は肺病変部から複数の病原体が検出されたものの、検出された各病原体に特徴的な病理像が認められなかったことからPRDCと診断された(図2)。 4. 豚サーコウイルス2型(PCV2)は検査したほぼ全ての供試豚から検出されたものの、特徴的な病理的変化が見られた供試豚は僅か7頭であった。Mycoplasma hyorhinis およびPRRSVはそれぞれ約60%から、M. hyopneumoniae は21%から検出された。パスツレラや連鎖球菌、大腸菌等はこれらに次いで比較的多く分離された(表1)。M. hyorhinis 以外の細菌の検出頻度は、農場によって差異がみられた。 5. PRDCと診断された豚の肺炎病変部からPCV2ならびにM. hyorhinis が特に高い割合で検出された(図3)。 以上より、PRDCを含む肺炎は豚の発育不良に深く関与しており、しかもPRDCが肺炎の約半数を占めることが明らかとなった。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 病変部から検出される病原体は農場ごとに異なっており、農場ごとの肺炎に関与する病原体の調査が発育不良豚の肺炎対策として重要であると考えられた。 2. PRDCと診断された発育不良豚の肺炎病変部からPCV2ならびにM. hyorhinis が高率に検出されたが、今回の調査から病理学的にはPCV2は肺炎との関連が低いと考えられた。M. hyorhinis は二次的に肺炎を重篤化している可能性が考えられるが、PRDCとの関連については明らかではない。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 繁殖性改善 豚 |