タイトル | Actinobacillus pleuropneumoniaeサルファ剤−ストレプトマイシン耐性プラスミドpMS260の塩基配列解析 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 | 2002~2004 |
研究担当者 |
伊藤博哉 秋庭正人 石井宏志(杉並犬猫病院) |
発行年度 | 2004 |
要約 | A. pleuropneumoniae から分離された伝達性のサルファ剤-ストレプトマイシン耐性プラスミドpMS260の全塩基配列を決定した。その結果、pMS260には新たにクロラムフェニコール耐性遺伝子を獲得する能力を有する塩基配列が存在し、 pMS260はこの配列を利用し3剤耐性プラスミドとなる可能性がある事を明らかにした。 |
キーワード | ブタ、豚胸膜肺炎、Actinobacillus pleuropneumoniae、薬剤耐性プラスミド、薬剤耐性獲得、相同性組換え |
背景・ねらい | A. pleuropneumoniae による豚胸膜肺炎の治療には抗生物質等の薬剤が使用されているが、近年多剤耐性化の傾向にある。そこで本菌における多剤耐性メカニズムを明らかにする事を目的として、A. pleuropneumoniae から分離された伝達性の薬剤耐性プラスミドpMS260の全塩基配列の決定及び解析を行なった。 |
成果の内容・特徴 | 1. A. pleuropneumoniae薬剤(サルファ剤(SA)及びストレプトマイシン(SM))耐性プラスミドpMS260の全塩基配列(8124-bp)を決定した(accession number:AB109805)。その遺伝子地図を図1に示した。SA及びSM耐性遺伝子sulII、strA、strB、伝達性に関わる遺伝子mobA、mobB、mobC ならびに複製に関わる遺伝子と遺伝子領域repA、 repB、repC、cac、oriVb、oriT が検出され、pMS260はA. pleuropneumoniae 以外にも様々な細菌種で複製可能なIncQ1-γグループに属するプラスミドであることを明らかにした。 2. pMS260は、sulII 及びstrA 間に存在する17-bpの配列を利用した相同性組換えによって、catIII を獲得する可能性があることを明らかにした(図2及び3)。 3. sulII とstrA 間のクロラムフェニコール(CP)耐性遺伝子(catIII )を含むDNA領域(777-bp)ならびにカナマイシン耐性遺伝子(aphI )を含むDNA領域(1953-bp)を除いたDNA領域は、pMS260ではドイツの豚の糞便由来細菌から分離されたプラスミドpIE1130とほぼ同一であった(図1)。またcatIII の場合は上記2に記載した機構で、一方aphI場合はその機構は不明であるが、aphI を含む1953-bpの断片がmobC に変異がないまま挿入されていたことから、pMS260様のプラスミドがcatIII 及びaphI を獲得して、 pIE1130様のプラスミドが誕生した、またはその逆の可能性があることを明らかにした。 |
成果の活用面・留意点 | 1. A. pleuropneumoniae多剤耐性化機構のうちの一つが解明された。今後A. pleuropneumoniae のCP耐性株の耐性に関わる遺伝子及びその隣接領域の塩基配列をさらに調べ、実証していく必要がある。 2. CPを使用しなくてもSMやSAの使用が、pMS260等薬剤耐性プラスミドの維持率や他の機構によるCP系薬剤の耐性を高める可能性があるため、適切な薬剤の使用を喚起する必要がある。 |
カテゴリ | 豚 薬剤 薬剤耐性 |