タイトル | 馬の新興パラミクソウイルス感染症の血清学的診断法(ELISA)の標準化 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 | 2003~2005 |
研究担当者 |
白井淳資 松村富夫(JRA総研) |
発行年度 | 2005 |
要約 | 馬の新興パラミクソウイルス(ヘンドラ及びニパウイルス)感染症を既存の血清学的診断法(ELISA)で診断する際には、馬血清については方法を簡略化できる。また、未知のパラミクソウイルス感染も検出するためには陽性診断基準を再検討する必要がある。 |
キーワード | ウマ、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、血清診断、ELISA |
背景・ねらい | 1994年オーストラリアにおいて馬に肺炎症状を引き起こすヘンドラウイルスによる新たな感染症が発見され、1999年にはマレーシアにおいて豚、馬および犬に感染する新しいニパウイルスの存在が確認された。わが国にはこれらの新興パラミクソウイルス感染症の発生はないが、馬術競技や競馬の国際化に伴い、これら疾病の防疫を考える上で適切な国内診断体制の確立が欠かせない。しかし両ウイルスはヒトに感染し、致死率が高いため最も危険な病原体に指定され、バイオセーフティーレベル4施設が必要なため、現在日本国内ではウイルスを扱えない。そこで、実際の診断を行う際の条件を検討することが急務となったので、国際的に唯一配布されている豪州の家畜衛生研究所で作製したヘンドラ及びニパウイルスのELISA用不活化抗原及び標準血清を導入し、診断法の条件検討を行った。両ウイルス陽性血清については、ヘンドラウイルス用ELISAでは馬血清のみ、ニパウイルス用ELISAでは豚血清のみが添付され、陽性血清自体の入手が困難なことから、限られた状況内で本実験は行われた。ヘンドラおよびニパウイルスの抗体検査ELISA法の手技は、試料の添加量や血清処理、反応時間、判定方法等が大きく異なっている。 |
成果の内容・特徴 | 1. ニパウイルス抗体検査のELISA法において、従来の方法では血清処理行程が複雑であるが、馬血清は無処理で、全てのOD値は0.035以下であり、陰性基準0.2以下に明確に当てはまる(図1)。豚血清は指示通りの処理を行わなければ、非特異反応が激しく検査が不可能である。 2. ニパウイルス陽性血清(豚血清)およびヘンドラウイルス陽性血清(馬血清)ともホモの抗原で測定したOD値はヘテロの抗原で測定したOD値の約2倍を示す(図2)。この結果より、ニパウイルスもしくはヘンドラウイルスどちらの抗原を用いたときでも、双方の陽性血清は検出可能であるが、陽性血清の基準をOD値0.1以上でしかも、ウイルス抗原OD値/細胞抗原OD値の比(S/N値)が2.0以上であることとする基準により双方のウイルス抗体が一つの方法で検出できることを示唆している。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ニパウイルスのELISAによる抗体検査法について、馬の抗体検査では、現行のマニュアルの簡略化を行っても確実に診断できる。 2. 発生したパラミクソウイルス感染症がヘンドラ、ニパウイルスもしくは未確認の新しいパラミクソウイルスによる可能性もあり、その場合のELISAによる抗体測定では、両ウイルスの現行の陽性診断基準を変更する必要がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | 馬 飼育技術 豚 |