牛乳房炎乳から分離された黄色ブドウ球菌の細菌学的特性

タイトル 牛乳房炎乳から分離された黄色ブドウ球菌の細菌学的特性
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 江口正志
勝田 賢
小林秀樹
秦 英司
西森 敬
発行年度 2006
要約  牛乳房炎乳から分離された黄色ブドウ球菌は、パルスフィールド電気泳動法により主に2つの遺伝子型に区分される。これら2つの遺伝子型に属する黄色ブドウ球菌はそれぞれ特徴的な毒素遺伝子の保有状況、コアグラーゼ血清型、莢膜型を示す。
キーワード 牛乳房炎、黄色ブドウ球菌、パルスフィールド電気泳動法、毒素遺伝子
背景・ねらい  黄色ブドウ球菌は牛乳房炎の主要な原因菌のひとつである。本菌による牛乳房炎の防あつには、乳房炎由来株の遺伝子型、表現型等の細菌学的特性を解明することが不可欠である。そこで、野外分離株をパルスフィールド電気泳動(PFGE)法による遺伝子型別、コアグラーゼ血清型、莢膜型などの表現型別を用いて解析し、さらにエンテロトキシン、エンテロトキシン様毒素、毒素ショック症候群毒素などの本菌の毒素遺伝子(sea-sei, selj-selr, tst )の検出を組み合わせ、牛乳房炎乳を起こす黄色ブドウ球菌株の細菌学的特性を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 2000年から2002年に214農場の牛乳房炎乳から分離した黄色ブドウ球菌計231株はPFGE法により16遺伝子型(A-P)、60遺伝子亜型に型別される。これら菌株のほとんどはA型またはB型に型別され(表)、200農場の乳房炎乳から分離された。
  2. A型のほとんどの菌株はコアグラーゼ血清型VI型、莢膜型8型、卵黄反応陰性である。一方、B型のほとんどの菌株はコアグラーゼ血清型VI型、莢膜型5型、卵黄反応陽性を示す(表)。
  3. A型の全株において毒素遺伝子が検出され、特にseg、sei、sec、tst、sell は高率に検出される。一方、B型ではほとんどの菌株で毒素遺伝子が検出されない(図)。
  4. 農場内で経時的に収集した黄色ブドウ球菌のPFGE解析では、乳汁由来株と同じ遺伝子型を示す菌株は乳房、乳頭、搾乳器具から長期間分離され、牛舎内環境(牛舎通路、落下細菌、犬)から分離された菌株とは異なる遺伝子亜型を示す。
成果の活用面・留意点
  1. 乳汁および牛体から同じ遺伝子型の黄色ブドウ球菌株が長期間分離され、特定の遺伝子型を示す黄色ブドウ球菌が乳房炎乳から広範に検出された事実は、牛の移動(導入など)が本菌の蔓延に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。
  2. 黄色ブドウ球菌による牛乳房炎の発生機構の解明には、主要な遺伝子型であるA型、B型を示す菌株に研究対象を絞り、本菌株群に特徴的な病原因子の機能解析などを実施することが有用である。
図表1 225854-1.gif
図表2 225854-2.gif
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