タイトル |
弱溶血性を示す豚由来Brachyspira属菌の迅速同定法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
大宅辰夫
荒木博司(長崎県県北家保)
末吉益雄(宮崎大学)
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発行年度 |
2007 |
要約 |
弱溶血性を示す豚由来Brachyspira属菌は、菌種の同定が困難なため腸管感染症への関与の実態は不明である。生化学性状試験による迅速同定法とPCR-RFLP解析または菌種特異PCRを併用することで、菌種の正確かつ迅速な同定が可能である。
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キーワード |
Brachyspira、迅速同定、PCR-RFLP
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背景・ねらい |
養豚場において現在認識されている豚のスピロヘータ感染症は、強溶血性を示すBrachyspira(B.) hyodysenteriaeによる豚赤痢と弱溶血性を示すB. pilosicoliによる腸管スピロヘータ症である。その他数種の弱溶血性Brachyspira属菌種の腸管感染症への関与が疑われているが、菌種レベルの同定が困難なためその実態は不明である。大規模施設型養豚における生産性阻害要因の一つであるBrachyspira属菌による腸管感染症の実態を明らかにするとともに、効果的な防除法の確立と細菌学的確定診断を目的として、豚由来Brachyspira属菌の迅速同定法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- インドール産生性、馬尿酸加水分解性、菌体酵素活性(α-galactosidase、β-glucosidase)を指標とする、生化学的性状試験による豚由来弱溶血性Brachyspira属菌の迅速同定法の開発を試みる。
- 供試した弱溶血性Brachyspira属菌49株中33株は、開発した迅速同定法によりB. innocensと同定されたが、残り16株のうちBrachyspira属5菌種(基準株)の生化学的性状と一致する株はB. intermediaと同定される1株(No.15)とB. murdochiiと同定される4株(No.16~19)であり、残り11株(No.6~14, No.20, No.21)は、各菌種基準株とは異なる生化学的性状を示し、同定は不可能である(表1)
- 定型的性状を示しB. innocensと同定された33株を除く16株について、PCR-RFLP法(Rhode et al., 2002)による菌種同定を試みたところ、全株がBrachyspira各菌種の基準株と一致するRFLP像を示し同定が可能である(図1)。
- Brachyspira属菌の菌種レベルでの同定には、B. hyodysenteriaeとB. pilosicoliを対象としたDuplex PCR法(La et al.、2003)あるいはBrachyspira各菌種特異PCR法(Weissenböck et al., 2005)が有用である(図2)。
- 生化学的性状試験とPCR-RFLP法または菌種特異PCRを組み合わせることで、豚由来弱溶血性Brachyspira属菌の正確な同定が可能である。
- 成果の詳細は動物衛生研究所九州支所ホームページで公開している。
http://niah.naro.affrc.go.jp/sat/joseki/Tonseki/Tonseki_METHOD.htm
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成果の活用面・留意点 |
- 生産現場における豚のスピロヘータ性腸管感染症の実態が明らかとなるだけでなく本症の迅速診断法を開発することで、効果的な防除法とと畜検査時の迅速診断法の確立につながる。
- 生産性阻害要因の一つであるBrachyspira属菌による腸管感染症の防除対策が確立されることで、養豚農家の経済損失の低減化に貢献できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
馬
肉牛
豚
防除
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