タイトル |
Mycoplasma hyopneumoniaeマクロライド耐性簡易スクリーニング法の開発 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 |
2005~2006 |
研究担当者 |
金崎未香
小林秀樹
秦 英司
西森 敬
|
発行年度 |
2007 |
要約 |
マクロライド系抗菌剤に耐性を示す豚マイコプラズマ肺炎原因菌Mycoplasma hyopneumoniaeの耐性機構の知見を応用することにより、マクロライド系抗菌剤耐性株を迅速、簡便に検出することが可能である。
|
キーワード |
DNA蛍光融解曲線解析、豚、マイコプラズマ肺炎、Mycoplasma hyopneumoniae、マクロライド耐性
|
背景・ねらい |
豚のマイコプラズマ肺炎(MPS)はMycoplasma hyopneumoniaeによって惹起される。MPS対策には、ワクチンと抗菌剤の使用が一般的である。抗菌剤使用の場合、事前にマイコプラズマ分離を実施し薬剤感受性試験により感受性を示す有効薬剤の選択が必要である。しかし、現場では分離の困難なM. hyopneumoniaeの分離は行われず、獣医師の経験に基づき薬剤が選択、使用されている。本研究では、近年分離したM. hyopneumoniae株に対し、MPS対策として使用される抗菌剤の薬剤感受性状況を明らかにするとともに、耐性機構を解明し、その機構を応用した耐性株の迅速スクリーニング法を開発することを目的とする。
|
成果の内容・特徴 |
- 国内10道県70農場から2004~2005年に出荷された肉豚の肺炎病巣部から分離した90株のM. hyopneumoniaeについてマイコプラズマ対策に有効とされる9種の抗菌剤を供試し薬剤感受性試験を実施した。薬剤耐性株は7株見いだされ、いずれもマクロライド系抗菌剤(タイロシン、ジョサマイシン、エリスロマイシン)とリンコマイシンに交差耐性を示した(表1)。
- 耐性を示した7株はいずれも23SリボソームRNAに1カ所(2058位A→G)あるいは2カ所(2058位A→Gおよび2062位A→C)のミューテーションが確認された。(表2)
- 培養菌から作製したテンペレートを供試して得られたnested PCR産物についてDNA変異解析用蛍光色素LCGreen ITM とSNP(一塩基多型)検出装置(ポイントミューテーション検出装置)HR-1 (Idaho Technology Inc., USA)による蛍光融解曲線解析を実施した。薬剤感受性株である基準株J株で基準値を設定し融解曲線を負の一次微分解析処理(-df/dT)したところ、図1に示すように感受性株は負の二次曲線(A)を、耐性株、すなわちヘテロ変異型あるいは二重ヘテロ変異型(ポイントミューテーションが存在するもの)は負の四次あるいは六次曲線を示した(B)。
- 耐性株が分離された乳剤材料から得られたnested PCR産物の解析でも明瞭な負の四次曲線が得られた。この条件を得るには感染菌量が推定で106CFU/g以上必要であった。肺材料中に多量のM. hyorhinisが感染していないことも必要であった。肺乳剤作製から結果が得られるまでの全過程の所要時間は約8時間であった。
|
成果の活用面・留意点 |
- 国内にマクロライド耐性M. hyopneumoniaeが存在することを明らかにした。豚マイコプラズマ肺炎対策でマクロライド系抗菌剤を使用する際は耐性株の存在に留意する必要がある。
- 菌分離をしなくともマクロライド耐性菌の簡易スクリーニングが可能であることが示唆された。肺乳剤材料を供試する場合はM. hyorhinisの混合感染に留意する。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
カテゴリ |
出荷調整
耐性菌
豚
薬剤
薬剤耐性
|