インターロイキン-8の乳槽内投与は全身性の炎症反応を誘発する

タイトル インターロイキン-8の乳槽内投与は全身性の炎症反応を誘発する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2007~2008
研究担当者 近山之雄
高橋雄治
渡部 淳
発行年度 2008
要約  インターロイキン-8(IL-8)の乳槽内への投与は、大腸菌性の急性乳房炎等に類似した全身性の炎症反応を引き起こす。これは乳房炎罹患時に炎症部位(乳腺)で増加するIL-8が局所症状に加えて、全身症状の誘起にも関与することを示唆する。
キーワード インターロイキン-8、乳房炎、乳牛、炎症性サイトカイン、急性期タンパク質
背景・ねらい  乳房炎罹患牛の全身症状は起因菌の種類や動物の生理的状態によって様々である。そうした症状の違いは、細菌感染に伴い産生される免疫調整物質(いわゆる炎症性サイトカイン)の種類や発現量の差異が一因と考えられている。炎症性サイトカインの一つであるIL-8は好中球を炎症局所へ遊走させる作用を有し、細菌感染初期の生体防御に重要である。その一方、乳腺における炎症性サイトカインの過剰な発現がしばしば全身性の炎症反応を起こし、ショック症状を誘発することも示唆されている。今回の試験は、乳腺局所のIL-8が全身性の炎症反応に及ぼす影響を評価することを目的に行った。
成果の内容・特徴 乾乳初日から健康なホルスタイン牛(各群3頭ずつ)に対して、右前分房の乳槽に10mlの生理食塩水に溶解した組換え型ウシIL-8(rbIL-8)をそれぞれ5µgおよび25µgずつ乳頭より注入投与し、また対照として左前分房の乳槽に生理食塩水を投与し、30日間経時的に乳腺分泌液(乾乳期乳汁)および血液を採取する。
  1. rbIL-8を投与した分房から採取した乳汁では、体細胞の増加(図1)と血清由来のタンパク質(血清アルブミン等)濃度の上昇(図示せず)が起こり、その程度はIL-8投与量に依存する。rbIL-8の乳槽内への投与に伴うこれらの反応は大腸菌性乳房炎罹患牛の乳にみられる状態と類似する。
  2. rbIL-8(25µg)投与群において、直腸温の上昇、末梢血白血球数の減少および血清中急性期タンパク質(ハプトグロビン)濃度の上昇が認められる(図2)。これらは大腸菌性乳房炎においてしばしばみられる症状と類似する。
成果の活用面・留意点
  1. IL-8は大腸菌性乳房炎罹患牛で観察される全身性のショック様症状の誘発など、症状の重篤化に関与すると疑われ、本疾病の診断や防除を考える上で重要な因子と考えられる。
  2. 黄色ブドウ球菌による乳房炎では、その急性期におけるIL-8などの炎症性サイトカインの誘導が著しく弱い。この場合、大腸菌性乳房炎とは異なるメカニズムで炎症が誘発されると考えられる。
図表1 225911-1.gif
図表2 225911-2.gif
カテゴリ 病害虫 乳牛 防除

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる