ブタ体外培養卵子における核ならびに細胞質の成熟

タイトル ブタ体外培養卵子における核ならびに細胞質の成熟
担当機関 農業生物資源研究所
研究期間 1990~1994
研究担当者
発行年度 1994
要約 体外培養したブタの卵子を用いて、核と細胞質の成熟の関連性について調べた。核の成熟と細胞質の成熟完了はそれぞれ、30時間ならびに48時間以降と時間的にずれており、それは成熟促進因子(MPF)により制御されることが示唆された。
背景・ねらい 哺乳動物卵子を体外で培養すると、卵核胞期から第二減数分裂中期に達し、核の成熟が完了する。これらの成熟卵子は受精が可能な卵子である。一方、核が成熟した後さらに時間の経過した卵子の方が、前核形成いわゆる活性化がおこりやすく、これは「細胞質の成熟」といわれている。本研究では、核と細胞質の成熟の関連性を、細胞周期を調節している成熟促進因子(MPF)の活性の変動から検討した。
成果の内容・特徴
  1.  ブタ卵胞卵子を修正ウェイマス752/1液にて体外培養すると、30時間目から卵子の核は第二減数分裂中期に達し、成熟卵子が出現した。成熟率は36から72時間で約70%であった(図1)。
  2.  成熟卵子において、培養時間を延長(エイジング)するとMPF活性値(ヒストンH1キナーゼ活性値として測定)が漸減した(図2)。エイジング卵子に電気刺激を加え単為発生を誘起したところ、培養36時間の卵子では活性化がおこらず、培養48時間以降でほぼ60%の活性化率を示し、細胞質の成熟が完了していることが示唆された。活性化卵子には、第二極体の放出と雌性前核形成が観察される正常な活性化卵子(図3)と直接分割する異常な活性化卵子が存在した。異常活性化卵子は時間の経過とともにその割合も増加することが判明した(図4)。
  3.  卵子核の成熟は培養後30時間ごろより開始されるが、細胞質の成熟には48時間以上必要であることが判明した。このことにより、核と細胞質が成熟するには時間的な差のあることがわかった。
  4.  卵子の活性化はMPF活性の急激な低下により制御されていることから、エイジング卵子に電気刺激を加えた場合、容易に閾値以下になり活性化が誘起されるものと考えられた。MPFが核と細胞質の成熟を制御することが示唆された。
成果の活用面・留意点 これらの知見は、核移植等の技術を用いた卵子や胚の有効利用法に応用できる。今後は、核と細胞質の成熟について分子的な発現機序を解明し、成熟時間を揃える培養条件を設定する必要がある。
図表1 225939-1.gif
図表2 225939-2.gif
図表3 225939-3.gif
図表4 225939-4.gif
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