タイトル |
時系列解析による日乳量変動に対する暑熱環境の影響評価 |
担当機関 |
北海道農業試験場 |
研究期間 |
1996~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
乳量変動に対する暑熱ストレスの影響を時系列解析により評価した。その結果,温熱環境変動の乳量に対する影響はその2~3日後に最大となり,また,THI(温湿度指数)としては最低気温THIの方が最高気温THIより乳量変動に大きく影響する。
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背景・ねらい |
乳牛の受ける環境ストレスの中で、乳量・乳質等の生産性に最も大きな影響を及ぼすのは温熱環境である。夏期が比較的冷涼な北海道においては、暑熱環境そのものの厳しさは西南暖地と比べると穏やかであるが、暑さに十分適応するに至らない段階で、急な暑熱感作を受けるという特徴がある。本研究では、暑熱対策に資するため、通常の飼養管理下における泌乳牛の日乳量変動に及ぼす温熱環境の影響を時系列解析により明らかした。
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成果の内容・特徴 |
北農試において飼養しているホルスタイン種泌乳牛32頭について調査した。用いたデータは全国的に猛暑が記録された1994年7月~8月[北農試における平均日最高気温:21.2℃(6月),26.1℃(7月),28,4℃(8月);日最高気温:35.1℃,日最高THI79.1(8月7日)]の2ケ月の泌乳成績である。乳牛は試験牛舎で飼養され、全群平均の日乳量は約30kgで、産次は2~5産である。飼料給与は、オーチャードグラスサイレージ、乾草、配合飼料を当場の慣行により1日2回の分離給与で行われている。THI(温湿度指数)は、Johnsonらによって提示された式[THI=0.8Tdb+0.01RH(Tdb-14.3)+46.3;Tdbは乾球温度℃、RHは相対湿度%]により算出した。THI(最高気温THI、最低気温TH)及び日乳量は、それぞれの原データより7点移動平均値を差し引くことによって、傾向変動を除去した各定常時系列(図1)、(図2)を求め、THI乳量変動の時間遅れの関係をクロスコレログラムにより解析した。時系列処理は、牛群を日乳量によって20kg、30kg、40kgに分けたものと、全群を対象として行った。
- 最高気温THI(MAX‐THI)と最低気温THI(MIN・THI)それぞれと乳量変動とのクロスコレログラムを求めた(図3)。ここでは、乳量水準による差は認められなかったので、全牛の成績をプールして以下の結果を得た。THIと乳量変化の相互相関係数は2~3日後が負の最大値となり、その値は、MIN・THIがMAX・THIより大きな値であった。
- 重回帰分析法により、日乳量変動に対するMAX・THIとMIN・THIそれぞれの寄与の程度(相対寄与率)を調べた。その結果、全体の7~8割をMIN‐THIが寄与していることが明らかとなった(図4)。
- これらのことより、暑熱環境の乳量への影響の緩和策として、日最低気温について配慮する必要がある。例えば、夏季の夜間に気温を下げる飼養管理は、乳生産からみた乳牛の暑熱対策としては効率的な方法と考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 夏期の暑熱対策を講ずる上での温熱環境条件として参考となる。
- 本成績は、環境調節室ではない通常の飼養管理下でのものであるので、温度・湿度以外の環境要因との交絡に留意が必要。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
飼育技術
乳牛
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