タイトル |
豚卵子の成熟および活性化指標としての表層粒の変化 |
担当機関 |
畜産試験場 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
豚卵子の成熟および受精過程における表層粒の変化について調べた。精子侵入は未成熟の卵子でも認められるが,表層粒は放出されなかった。卵子の核の成熟に伴って表層粒は卵細胞膜直下へ移動した。表層粒の放出能力は成熟培養26時間以降の卵子に認められ,46時間後の卵子で最高になった。このことにより,表層粒の変化が豚卵子の成熟指標となり得ることが明らかになった。
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背景・ねらい |
豚卵子の体外受精においては、多精子受精の頻度が非常に高い。このため、体外成 熟卵子を体外で受精・発生させ、発生工学および遺伝子工学的研究の材料に用いられ るまでには至っていない。ここでは体外成熟卵子において多精子侵入が多い理由を解 明するために、体外成熟した豚卵子を受精などの方法で活性化させ、表層粒の反応を 調べた。
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成果の内容・特徴 |
表層粒の観察は、蛍光イソチオシアネート標識ピーナッツアグルチニン(FlTC一PNA)法で染色して行った。
- 豚未成熟卵子(培養0時間)において、表層粒は卵細胞質の皮質部に分布していた
(図1)。成熟培養26~46時間後では、卵子は第一成熟分裂中期~第二成熟分裂中期に達し、ほとんどの卵子において表層粒は卵細胞膜直下へ移動した(図2)。
- 卵核胞期の卵子へ精子が侵入しても表層粒は放出されなかった。しかし、成熟培養
後26および46時間の卵子では、それぞれ26%および71%の卵子で受精後に 表層粒が完全に放出された(図3)。この結果から、豚卵子の表層粒放出能力は卵子の核の成熟あるいは細胞質の成熟に関連していることが明らかになった。また、細胞質の成熟が完全でない卵子で多精子侵入が起こりうることが考えられた。
- 成熟培養後46時間の卵子において、表層粒は卵細胞膜直下に均一に分布していた
(図4)。また、媒精後18時間では、大部分の表層粒が卵細胞の外へ放出されていた(図5)。電気刺激およびカルシウムイオノフォアA23187処理により、卵子の表層粒は放出されたが、精子侵入卵子と比較して表層粒放出誘起作用は弱かった(図6)。これらのことから、体外成熟した豚卵子は、精子の侵入および人為的な刺激により表層粒を放出しうるが、各刺激により表層粒放出反応の程度が異なることが明らかとなった。
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成果の活用面・留意点 |
- 豚卵子活性化の指標として表層粒の放出度合を用いることができる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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カテゴリ |
ナッツ
豚
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