マウス生殖幹細胞における腫瘍壊死因子(TNFα)遺伝子とそのレセプター遺伝子の発現

タイトル マウス生殖幹細胞における腫瘍壊死因子(TNFα)遺伝子とそのレセプター遺伝子の発現
担当機関 畜産試験場
研究期間 1997~1997
研究担当者
発行年度 1997
要約 TNFα遺伝子とそのTNFαレセプター遺伝子(TNFRp60、TNFRp80)の発現パターンは、各種の生殖幹細胞や胚細胞の間で差異があり、これらの遺伝子はそれらの細胞を識別するマーカーとして利用できる。
背景・ねらい ES細胞等の生殖幹細胞は、体細胞とは異なり正常細胞でありながら無限増殖能を維持していることから、家畜へ外来遺伝子を導入する媒体としてばかりでなく、動物の発生分化を理解する研究材料として有用である。しかし、今日においても家畜では生殖幹細胞の樹立は困難である。その原因の一つに生殖幹細胞がどのような機構で成立するかが不明であることが上げられる。そこで、生殖幹細胞を特徴づける発現遺伝子を、それらの起源となる細胞との違いとしてDDRT・PCR(ディファレンシャルディスブレイ逆転写遺伝子増幅法)
でとらえようと試みた。その結果、ES細胞で発現が検出され、その起源である内部細胞塊(ICM)細胞では検出されないcDNAクローンとして腫傷壊死因子(TNF)α遺伝子が分離された。本研究ではES細胞等の生殖幹細胞におけるTNFαとそのレ七プターであるTNFRp60およびTNFRp80の遺伝子発現の特異性をRT・PCRにより検討した。
成果の内容・特徴
  1. 胚性癌腫(EC)細胞、胚性幹(ES)細胞および始原生殖細胞由来(EG)細胞、さらにES細胞、EG細胞の起源である3.5日齢胚由来単離ICM並びに12.5日齢胎子由来始原生殖細胞(PGCs)から全RNAを調製し、これを用いて逆転写反応を行いcDNAを得た。このcDNAを鋳型としてTNFα、TNFRp60およびTNFRp80のcDNAに特異的なプライマーを用いたPCRを常法により行った。
  2. EG細胞およびEC細胞ではTNFαとTNFRp60およびTNFRp80遺伝子の発現が検出された。これに対して、ES細胞ではTNFRp60遺伝子のみ発現が検出されなかった(図1)。
  3. ICMではES細胞とは異なりTNFα遺伝子の発現はみられず、レセプター遺伝子においても
    TNFRp80のみ発現が検出された。また、PGCsではTNFRp80の発現が見られない点でEG細胞と
    は異なる(図1)。
  4. これらの結果から、TNFα遣伝子およびそのレセプター遺伝子の発現の有無は各種の生殖幹細胞や胚細胞で特徴的なパターンを示すことが判明した(表1)。また、ES細胞やEG細胞が起源となる細胞から樹立される過程でTNFαとそのレセプター遺伝子の発現パターンが変化することが示され、この間の細胞の分化・増殖にTNFαのリガンド・レセプター系が関与している可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点
  1. TNFα遺伝子およびそのレセプター遺伝子の発現の有無は各生殖幹細胞を特徴づけ、これらを識別するマーカーとして利用可能である。
  2. 家畜胚等におけるこれらの遺伝子の発現の有無については別に検討を要する。
図表1 226045-1.jpg
図表2 226045-2.jpg
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