タイトル |
北パキスタンにおける植物遺伝資源の遺伝的多様性と地理的分布 |
担当機関 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 |
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研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
北パキスタンで収集した植物遺伝資源の遺伝的多様性を明らかにした。イネは標高によって長・短粒型品種が分布している。インゲンマメは中南米起源と推定され、地域によって種子タンパク質変異の分布が異なる。アワは、東西地域に分布する品種が形態的に分化している。北パキスタンの作物在来品種は、山岳地域の地理的特性を反映した多様な遺伝的変異を有している。
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背景・ねらい |
パキスタン北部は、中国・アフガニスタン・インドなどと国境を接し、古くからシルクロードを介して東西・南北アジアを結ぶ地理的要衝に在る。地形的には、カラコルム山脈やヒンズークシュ山地の麓に位置する冷涼な乾燥地帯で、標高2000mを越える山間地でも農業が営まれている。このような地域における遺伝資源は多様性に富むと考えられるが、十分な調査は行われていなかった。そこで、1989年と1991年の2ヶ年にわたって同国農業研究センターと共同で遺伝資源の分布調査と収集を行い、北パキスタンにおける植物遺伝資源の多様性を解析した。
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成果の内容・特徴 |
- パキスタン全土における2ヶ年の探索収集で、禾穀類609点、豆類422点その他植物84点の計1,117点を収集した(表1)。パキスタン北部の山岳地域では、イネ・豆類・雑穀類の在来品種が現在も栽培されていた。しかし、低標高地ほど改良品種の普及が進んでおり、パキスタン全土で在来品種は急速に失われていた。
- イネは標高1000m~2000mの山岳地では日本型の短粒在来品種が栽培され、標高1000m以下の地域ではインド型の長粒品種と混在している(図1)。
- インゲンマメの種子貯蔵タンパク質は、パキスタンで栽培されている品種の多くが中米産品種に特徴的な泳動像型を示した。また、泳動像における多型の分布は地域によって異なる(図2)。
- アワは、草型や穂・小花の形態などによって三群に分かれ、それぞれのグループは明瞭に異なる地域に分布していた。
- 北パキスタンで栽培されている作物在来品種は、地理的・生態的条件を反映した多様な遺伝的変異を示した。
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成果の活用面・留意点 |
収集した遺伝資源は、パキスタン国立農業研究センターと折半し、元種子を長期保存施設で保存している。評価・増殖を行った種子は、遺伝資源管理貯蔵施設で配布用種子として保存し、育種素材として活用する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
あわ
育種
遺伝資源
いんげんまめ
乾燥
品種
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