タイトル |
窒素固定菌アゾスピリラムの分離・同定とその植物成長促進効果 |
担当機関 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1992~1994 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
つくば地区の圃場で栽培されていた数種蔬菜類の根から、窒素固定活性高く根の分化・伸長及び植物体の生長を促進する窒素固定菌アゾスピリラムを分離した。これらの菌株はA.brasilenseとして固定された。キュウリ及びコマツナから分離した菌株は養液栽培を行ったトマトで特に高い生長促進効果を示し、民間研究期間との交渉共同研究により、実用化への道が開かれた。
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背景・ねらい |
土壌細菌のアゾスピリラムは多くの植物の根の表面に棲息し、窒素固定を行いながら産生する植物ホルモンにより宿主植物の生長を促進する機能をもち、多くの国で有用菌株が収集され、微生物資材として利用されているが、我が国ではこの細菌に関する研究は少なく、とくにその実用化に関する研究はない。環境保全型農業推進のため、有用微生物の分離・収集・保存とその利用が望まれていた。
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成果の内容・特徴 |
- フィリピン、タイ、沖縄から、イネ科植物の根に棲息するアゾスピリラムを多数分離・収集し、植物の生長促進機能をもつ菌株をジーンバンクへ保存したが、つくば地区の圃場では、栽培されていたホウレンソウ、ハクサイ、ダイズ、キュウリ、コマツナ等の蔬菜類の根から窒素固定活性の比較的高い菌株を分離・収集した(表1)。
- 蔬菜類の根から分離した菌株は、宿主植物の根の分化・伸長及び植物体の生長を促進する機能の高いものであった。
- 民間研究期間との交流共同研究により、養液栽培したトマトへの蔬菜類から分離した菌株の接種試験を実施した結果、キュウリ及びコマツナから分離した菌株が特に高い生長促進効果を示した(表2、図1)。
- 培地での増殖特性、栄養要求性、16S-rRNAシーケンス等により、これらの菌株はグルコースを資化しないA.brasilenseとして同定された。
- 供試菌は何れも高いインドール酢酸を産生するが、生長促進効果との間に相関はない。
- 菌株及びトマトの養液栽培による利用法について特許を申請し,平成6年11月公開された。
- 微生物資材としての利用については、引き続き民間研究期間で研究が行われており、実用化の見通しがついている。
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成果の活用面・留意点 |
- 菌株は通産省生命工学工業技術研究所とジーンバンクに保存されており、研究材料あるいは微生物資材として活用できるが、特許が関係するので、利用については関係者からの許可が必要である。
- ここで扱った菌株は、広い宿主域を有するので、他の作物についても利用できるものと判断される。
- この土壌菌は根粒菌との混合接種により、高い複合効果を示すので、他の土壌細菌との併用においても機能拡大が期待される。アゾスピリラムは運動性を有し、根面への接着・増殖が速いので、接種量は他の細菌より少なくてよい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
きゅうり
こまつな
大豆
トマト
はくさい
ほうれんそう
養液栽培
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