植物培養細胞の簡便かつ安定な凍結保存法の確立

タイトル 植物培養細胞の簡便かつ安定な凍結保存法の確立
担当機関 農業生物資源研究所
研究期間 1995~1996
研究担当者
発行年度 1995
要約  植物培養細胞の凍結保存のための新しい凍結防御剤(CSP1)を開発し、簡便で生存率の高い緩速予備東結法による超低温保存技術を確立した。また、CSP1で前処理することにより植物懸濁培養細胞のガラス化法による凍結保存も可能になった。
背景・ねらい  植物バイオテクノロジーの進歩に伴い、植物体再生系や、形質転換細胞、有用物質生産系及び研究用実験系等の貴重な培養系が作られてきた。これらの維持には長期継代による特性の喪失、植継ぎの労力やコンタミによる消失等の問題点がある。これらを解決する長期安定保存法として、液体窒素による凍結保存が注目されている。しかし、一般に植物細胞は水分含量が高いため凍結保存が難しく、動物や微生物に比べ実用化が遅れている。本研究ではブロムグラス懸濁培養細胞を用い、簡便で生存率の高い凍結保存法の開発を行った。
成果の内容・特徴
  1. 様々な組合せから緩速予備凍結用の優れた凍結防御剤(CSP1)を見出した(図1)。CSP1の組成は庶糖10%、DMSO10%、グリセリン5%(w/v)で、比較的毒性が少なく(浸潰時間:30~90分可)、冷却速度や予備凍結温度等の許容度が広い(図2)。
  2. 従来は凍結防御剤を氷温下で段階的に添加するのが定法てあったが、CSP1は室温下で細胞に直接添加できる(図3)。しかし、融解後の凍結防御剤の稀釈はゆっくり行う必要がある(図3)。
  3. 従来の緩速予備凍結法でよく行われる煩雑な前培養を省略でき、凍結防御剤も直接添加可能なため、所要時間が液体窒素浸漬まで3時間以内に短縮された。ブロムグラス培養細胞では、本方法により70%以上の液体窒素貯蔵後の生存率を得た(図1),(図2)。
  4. CSP1は緩速予備凍結法だけでなく、ガラス化法による凍結保存のための前処理液としても優れている。ガラス化法は高張なガラス化液に浸潰して脱水後、直接液体窒素に浸漬する方法であるが、懸濁培養細胞等では成功例が少ない。ブロムグラス培養細胞でも直接ガラス化液(PVS2:エチレングリコール15%(w/v)、グリセリン30%、DMSO15%、庶糖0.4M;Sakai et al. 1990)に浸漬した場含、液体窒素貯蔵後の生存率は0%であった。しかし、CSP1に20~30分浸潰し、更にPVS2液に2~4分処理することで液体窒素貯蔵後の生存率は30~40%に高まった(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. CSP1を用いた緩速予備凍結法では高い生存率を得るためにはガラス遠沈管などガラス製容器を使う必要がある。プラスチック製のクライオチューブは熱伝導率が低く、適さない。また、本法はニンジン懸濁培養細胞、メロン苗条原基、サトイモカルス等に応用可能で、液体培養系やカルス等に適するが、茎頂等には一般に不適である。
  2. 前項4.の凍結保存法(CSP1前処理―PVS2ガラス化法)は茎頂等の凍結保存に適する。 
  3.  両方法とも他の培養系に適用する場合、材料に応じて多少の改変が必要かも知れない。
図表1 226152-1.gif
図表2 226152-2.gif
図表3 226152-3.gif
図表4 226152-4.gif
カテゴリ くり さといも にんじん メロン

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