コムギのハードニング反応性遺伝子

タイトル コムギのハードニング反応性遺伝子
担当機関 北海道農業試験場
研究期間 1997~1997
研究担当者
発行年度 1997
要約   ハードニング誘導環境下において特異的に発現する遺伝子群を、コムギより単離し、その構造を明らかにし、ハードニング誘導に関する機能の推定を行った。ハードニング反応性遺伝子の一つは、葉緑体蛋白質をコードしており、ハードニング時の光障害の緩和の機能を持つものと推定される。
背景・ねらい ハードニング誘導環境下において特異的に発現する遺伝子には、ハードニング機構に関与するものがあると考えられる。そこで、これらの遺伝子群を単離し、その構造を明らかにすることを試みた。また、あわせて、それらの遺伝子群の遺伝子発現パターンを明らかにし、ハードニング誘導機構における遺伝子機能の推定を行った。
成果の内容・特徴
  1. ハードニングによる耐凍性獲得能力(以下、ハードニング能力という)の高いコムギ秋播き品種Valuevskayaを材料に用い、4℃、24時間のハードニング処理を施したseedlingよりcDNAライブラリーを作成した。ディファレンシャルスクリーニング法により、ハードニング処理特異的に発現が誘導されるcDNAを単離し、その中から5種類のcDNAクローン(har3,
    har8, har9, har11, har12 )について、その構造と発現パターンの解析を行った。
  2. har3 とhar8 では、処理1日目から耐凍性がほぼ最高値に達する16日目までを通じて高い発現量が持続する。また、デハードニング処理1日でその発現は急減する。一方、har12 では、処理7日目までは、発現量が徐々に増大するが、16日目には微量レベルまで低下する(図1)。また、ハードニング誘導と関連がある乾燥・アブシジン酸及び塩ストレスの処理によって、各cDNAクローンの発現が誘導されるが、高温処理では、発現が認められない(図2)。
  3. ハードニング能力のない低温感受性のイネにおいては、いずれのcDNAクローンの発現も見いだされない。一方、ハードニング能力の異なるコムギ品種間においては、cDNAクローンの発現パターンに差が見られ、これらのcDNAクローンとハードニング機構との関連が示唆される(図3)。
  4. 塩基配列を決定した結果、har8 は、コムギ低温反応性遺伝子Wcs120、Wcs66 と高い相同性が見られ、これらのgene familyの一つであると推定される。har12 は、葉緑体への移行を示すシグナルペプチド配列を持つ光誘導型の葉緑体ELIP蛋白質であると推定される。葉緑体ELIP蛋白質は、光障害発生時における分解産物の除去に働くと考えられており、光だけではなく、低温でもその発現が誘導されることは、低温による光障害の緩和に機能していると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. さらに詳細な機能解析のため、本研究で得られたcDNAクローンを導入したイネ形質転換体を作成中である。
  2. これらのcDNAクローンの発現パターンから、コムギ品種のハードニング能力の推定が可能である。
図表1 226194-1.gif
図表2 226194-2.gif
図表3 226194-3.gif
カテゴリ 乾燥 品種

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