タイトル |
イオンビーム12C5+照射によるキクの花色突然変異体の誘発 |
担当機関 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1994~2001 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
イオンビームの変異誘発効果を評価するために、キクの培養外植片に照射を行い、その再分化個体には独特の突然変異体が高率に誘発され、イオンは新変異原として利用できる可能性が示された。
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背景・ねらい |
世界でもまたわが国でも、突然変異品種の変異原はγ線かX線で占められ、突然変異の種類にも限界があるため、新変異原の開発が急がれてきた。イオンビームはイオン種、エネルギーの強度や透過深度を変更でき、γ線に比べてエネルギー付与(LAI)、生物効果(RBE)ともに高いので、変異原としての評価を試みた。キクの培養外植片にイオンを照射し、再分化個体に現れた突然変異の効果をγ線と比較した。
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成果の内容・特徴 |
- キク品種「大平」(花色:桃)の花弁および葉片を外植片として培地に置床し、4日後に日本原研高崎研の照射施設AVFサイクロトロンで加速粒子12C5+のイオンビームの照射を行った。照射材料からカルスを誘導し、その再分化個体の突然変異を調査した。
- イオン照射による培養外植片の障害は、5Gyから現われ、10Gyでは半致死(LD50)、30Gyでは全致死線量(LD100)であった(図1)。適正な照射線量は、5~15Gyの範囲と推定された。イオンはγ線の約4.5倍程度の生物効果を示した。
- 花色変異率は照射葉片より照射花弁の方が明らかに高く、20Gyまでは線量の増加に伴って高まった(図2)。花弁からの花色変異率が高まったのは,照射時の花弁では花色遺伝子が発現し、花の変異が誘発され易い状態にあったと思われる。
- イオン照射の花色変異率はγ線に比べ花弁、葉片ともに半量程度であった(図3)。γ線の花色変異体は単色で桃色の濃淡が大半を占めたのに対し、イオン照射の花弁の再分化個体では、複色や条斑タイプのドラスチックな変異体が高率に誘発された(図4、5)。
- 複色や条斑タイプの変異体は、γ線では見られないイオンに独特の変異体であった。従って、イオンビーム12C5+は新変異原として利用できる可能性が示された。
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成果の活用面・留意点 |
今後、イオン照射では、イオン種や作物種を変えて基礎データを蓄積する必要がある。イオンはγ線と異なり透過深度が極めて浅いので照射材料の調整を要し、またマシンタイムによる制約もある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
きく
品種
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