アブラナ科自家不和合性遺伝子の進化機構

タイトル アブラナ科自家不和合性遺伝子の進化機構
担当機関 農業生物資源研究所
研究期間 1997~1997
研究担当者
発行年度 1997
要約 アブラナ科植物の自家不和合性を制御する遺伝子 SLG とSRKを多数のS 遺伝子型から単離した。その塩基配列の解析等から、アブラナ科自家不和合性遺伝子の進化には、遺伝子内組換え、遺伝子変換が関与していたこと、その進化において生物集団規模が非常に小さくなる過程(ボトルネック)を経ていたことが明らかになった。
背景・ねらい  自家不和合性とは自己花粉の受精を阻害し、集団内の遺伝的変異を維持する機構である。これは複対立遺伝子座(
S )により制御されており、花粉と雌しべの S 遺伝子型が一致した時に不和合性反応が引き起こされる。雌しべ側の認識にはS遺伝子座に存在する多様性に富む遺伝子SLG と SRK が関与する。SRKは受容体型タンパク質リン酸化酵素であり、細胞外Sドメインと花粉側リガンドの結合が不和合性反応を引き起こすと考えられている。SLGはSドメインに高い相同性を示す。S遺伝子型には 50以上の種類があり、その進化機構は昔から研究者の関心を集めてきた。
成果の内容・特徴
  1. 多数のSLGを Brassica oleracea、B. campestris、Raphanus sativus から単離し、その塩基配列から系統樹を作成した結果、それぞれの種のSLG は独立のクラスターを形成しなかった(図1)。これは、その多型がBrassica 属とRaphanus 属の属分化以前から存在していたことを示す。
  2. Brassica連(Brassica 属やRaphanus 属)以外のアブラナ科のSLG・SRK存在を検討したが、Brassica連のそれに高い相同性を示す遺伝子は検出されなかった。古代のSLG 及びSRK にはBrassica連のそれとは相同性の低い遺伝子も含まれており、進化の過程で集団規模の極めて小さい時期を経たため、ごく一部だけがBrassica連に受け継がれたと考えられる。
  3. B. oleraceaS35遺伝子型のSLG とSRK は後半部分の約650bpの塩基配列が完全に一致する。これは両遺伝子間で遺伝子変換が起きたことを示す。
  4. SLGに存在する4つの多型的な領域を用いていくつかのS 遺伝子型について系統樹を作成したところ、領域ごとにクラスタリングが異なっていた。このことは異なるS 遺伝子型間でSLG遺伝子内組換えが起きていたことを示唆する(図2)。
  5. 以上のように、アブラナ科自家不和合性遺伝子はBrassica連の分化に際して多数の対立遺伝子のうちごく一部だけがBrassica連に受け継がれたが、その後、属分化以前に多数の対立遺伝子が分化したと考えられる。また、その高い多型性は点突然変異だけではなく、SLG・SRK 間の遺伝子変換あるいは遺伝子内組換えが関与して生まれたものと考えられる。
成果の活用面・留意点
    今後は Brassica連以外の種のSLG・SRK を単離するとともに、未知の花粉側認識遺伝子を単離することにより、アブラナ科自家不和合性進化についての理解が一層進むものと考えられる。
図表1 226212-1.jpg
図表2 226212-2.jpg
カテゴリ あぶらな コスト

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