タイトル |
リボソームDNAのITS領域におけるユリ属の系統解析 |
担当機関 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1998~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
ユリ属の系統解析を、リボソームDNAのITS領域の塩基配列を用いて行い、属、節、ほとんどの亜節について系統関係を明らかにした。特に、テッポウユリの分類群がリーガルリリーの分類群やヤマユリの分類群よりも、オニユリの分類群に近縁であることを明らかにした。
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背景・ねらい |
近年ユリは新形質導入のため節間交雑が試みられるようになっているが、形態形質のみに基づいて行われた分類では、一部の節間及び種間の類縁関係が明確ではない。日本はヤマユリを始めとして多くの有用なユリ遺伝資源を有するが、今後それらを有効に活用していくためには、それらの問題点を明らかにする必要がある。本研究では、リボソームDNAのInternal transcribed spacer(ITS)領域の塩基配列を用いて、ユリ属植物55種及び近縁種であるCardiocrinum giganteum、Nomocharis saluenensis系統関係を明らかにしようとした。
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成果の内容・特徴 |
- ユリ属のITS領域の長さ及びGC含量は、既報の被子植物の範囲内であった(表1)。
- ユリ属の分類で最も妥当性の高いとされるComber (1949)の分類において、同じ節に分類されている種のほとんどは、ITS領域の塩基配列から作成した系統樹と同一の分岐群に属した(図1)。
- Daurolirion 節の分岐群は、Sinomartagon 節の分岐群の内群であり、かつ両者の遺伝距離は小さかった。従って、Daurolirion 節をSinomartagon 節と異なる節として扱うことは適当ではなく、両節はSinomartagon 節として統合すべきである(図1)。
- L. henryi はSinomartagon 節に、L. bulbiferum はLiriotypus 節に分類されているが、それぞれ分類されている節とは異なる節の種と分岐群を形成した。従って、前者は6a亜節に、後者はSinomartagon 節にそれぞれ分類することが適当であった(図1)。
- 6b亜節は、同節である6a亜節、及びArchelirion 節に近縁であると考えられていた。しかし、6b亜節はそれらよりもSinomartagon 節により近縁であり、Sinomartagon 節から直接分岐したと考えられた(図1)。
- 以上の結果から、ITS領域の塩基配列を用いることにより、ユリ属の節及びほとんどの亜節の系統関係を推定できた。
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成果の活用面・留意点 |
ユリ属における節及びほとんどの亜節の系統関係を明らかにしたので、本結果は、節間交雑などを行う時の基礎資料として用いることができる。また、ユリ属の分類に対して新たな提案を行うことができた。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
遺伝資源
ゆり
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