タイトル |
植物の成長に伴うDNAのメチル化とジーンサイレンシングの解析 |
担当機関 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1999~2002 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1999 |
要約 |
ジーンサイレンシングには開始、維持及び移行の3段階が存在するが、ジーンサイレンシングの開始が、成長に伴い徐々に引き起こされる形質転換植物を解析した結果、この植物においては成長に伴い新たに導入遺伝子のメチル化の起きていることが判明した。生育中の新たなDNAのメチル化がジーンサイレンシングの開始に関与していることを示唆する。
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背景・ねらい |
ジーンサイレンシングは遺伝子の発現が抑制される現象であるが、ゲノム上に複数存在する相同な塩基配列に依存している。このようなジーンサイレンシングは過剰な遺伝子の発現をゲノムが自ら抑制する機能であり、有用作物の開発あるいはジーンサイレンシングを利用した未知遺伝子の機能解明にとり重要な役割を果たすことが期待されている。しかしメカニズムについては不明の点が多い。本研究においては外来遺伝子を導入した植物を用い、ジーンサイレンシングの開始とDNAの新たなメチル化との関連を明らかにし、ジーンサイレンシング機構解明に役立てることをねらいとする。
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成果の内容・特徴 |
- 転写後型ジーンサイレンシングは通常、生育の初期(播種1-2週間)に開始され、その後維持される(4.03系統)。ここではジーンサイレンシングの開始が生育の中・後期(播種4-8週間)にずれるサツマイモ斑紋モザイクウイルス(SPFMV)の外被タンパク質(CP)遺伝子を導入したタバコ系統(4.28)を解析し、4.03系統及び非サイレンシング系統(4.07)と比較した。
- 本系統のT2世代では播種3週間後では、ほとんどの個体で導入遺伝子は高発現していたが、4週間後で1/10(本)、6週間後で5/10、8週間後で9/10の割合でジーンサイレンシングが引き起こされていた(図1)。
- メチル化感受性制限酵素を用いたサザンブロット解析により導入遺伝子のメチル化を検討した結果、本系統は、成長に従い、新たにDNAのメチル化が進み、そのメチル化の程度は最終的には幼苗期からジーンサイレンシングを起こしている系統と変わらなかった(図2)。
- この成長に伴うジーンサイレンシングの開始とDNAの新たなメチル化の様相は次世代においても同様であった。
- 以上の結果は、生育期間中のDNAの新たなメチル化がジーンサイレンシングに関与していることを示唆する。
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成果の活用面・留意点 |
本研究で得られた知見は、ゲノム機能としてのジーンサイレンシング機構の解明とDNAのメチル化制御による安定的発現技術の開発に結びつくことが期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
たばこ
播種
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