細胞増殖による転写後型遺伝子不活性化の抑制

タイトル 細胞増殖による転写後型遺伝子不活性化の抑制
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 1997~2002
研究担当者 シグナル応答研究ユニット
光原一朗
大橋祐子
分子遺伝研究G
発行年度 2001
要約 転写後型遺伝子不活性化は、通常次世代には遺伝しないと言われている。この現象を、導入したルシフェラーゼ遺伝子が不活性化されているタバコ植物を用いて解析したところ、種子形成過程における活発な細胞増殖によって不活性化が解除されることが、転写後型遺伝子不活性化が遺伝しないことの原因であることが示唆された。
キーワード 形質転換、遺伝子発現、転写後型遺伝子不活性化(PTGS)、ルシフェラーゼ、タバコ
背景・ねらい 導入した遺伝子が相同性のある内在性遺伝子とともに発現抑制を受ける、いわゆる遺伝子不活性化(gene silencing)と呼ばれる現象が、多くの形質転換植物で報告され問題となっている。これは、植物が本来持っているウイルスなどに対する防御機構の一部が、導入された外来遺伝子に対して働いたものと考えられている。同様の現象は、線虫やカビなどでもRNAi, quellingとして知られており、生物界に共通した自己防御機構の一部であると考えられている。現在では、この現象は、内在性遺伝子の発現抑制や高度ウイルス耐性作物作出に応用されている。本研究においては、レポーター遺伝子を高発現させたタバコ植物をモデル生物として、この導入遺伝子発現抑制の機構解析することを目的とする。この研究は、遺伝子不活性化現象の解明とその人為的制御に寄与するものと期待される。
成果の内容・特徴
  • ルシフェラーゼ遺伝子を、当研究室で開発した高発現プロモーターに接続して導入した形質転換タバコを材料とした。このタバコでは高頻度で遺伝子不活性化現象が認められるとともに、不活性化したルシフェラーゼ遺伝子の再活性化も認められた。生化学的な解析から、この不活性化現象が転写後型遺伝子不活性化(PTGS)遺伝子不活性化であることが明らかになった(図1)。
  • 遺伝学的な解析により、不活性化を起こしている植物でも次世代の幼植物では不活性化は観察されないこと、成長に従ってまた不活性化を示す植物が現れてくること及び、この不活性化の起こる頻度は、外来遺伝子のコピー数の増加に従って上昇することが明らかになった。
  • 種子形成過程におけるルシフェラーゼ遺伝子の発現の様子を高感度CCDカメラを用いてin plantaで観察したところ、遺伝子不活性化が起きている個体の中でも、成長点や花芽・種子など若い組織においては高いルシフェラーゼ活性が検出されることが明らかになった(図2)。
    従来まで、転写後型遺伝子不活性化が次世代に遺伝しないのは、減数分裂過程ないし受精の際に遺伝子不活性化が解除される為と考える説が有力であった。しかし今回の結果は、種子形成過程における活発な細胞増殖により転写後型遺伝子不活性化が阻害されるために、次世代の種子に不活性化が伝達されないことを示唆している。
  • 成果の活用面・留意点
      分裂が活発な組織で不活性化が起きていない原因を解析する。培養系の利用も考える。
    カテゴリ たばこ

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