タイトル |
エリシター及びジベレリンに応答するイネ遺伝子 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1999~2001 |
研究担当者 |
デイ(STAフェロー)
ロバート
渋谷直人
南 栄一
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発行年度 |
2001 |
要約 |
マイクロアレイ法によりキチンオリゴ糖エリシターによって発現が誘導されるイネ遺伝子、CIGR1、CIGR2を単離した。これらは活性型ジベレリン処理にも応答することから、キチンオリゴ糖はエリシター以外の生物活性を有することが示唆された。
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キーワード |
DNAマイクロアレイ、キチンオリゴ糖、エリシター、ジベレリン、イネ
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背景・ねらい |
キチンオリゴ糖は低濃度でイネに生体防御反応を誘導するエリシターである。防御反応においては種々の遺伝子発現変化が起こる。イネゲノム研究において整備されたマイクロアレイはこれらの変化を理解する有効な手法である。一方キチンオリゴ糖は根粒形成因子の骨格であり、またニンジン不定胚形成に重要な役割を持つことが知られていた。 本研究においてはキチンオリゴ糖が植物の生育、形態形成において果たす役割の解明を、遺伝子発現を手がかりとして明らかにすることを目的とした。
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成果の内容・特徴 |
イネ培養細胞(日本晴)を材料としてマイクロアレイ法によりキチンオリゴ糖に10分以内に応答する新規遺伝子群を単離し、そのうちの2種類(CIGR1、CIGR2)について全塩基配列を決定したところ、これらの遺伝子産物は植物に特有のGRAS遺伝子ファミリーに属するものであった。また両遺伝子ともイネゲノム中に1コピー存在すると考えられた。 これらの遺伝子産物と緑色蛍光タンパク質との融合遺伝子をタマネギ表皮細胞内で発現させたところその産物は細胞核に局在したことから、CIGR1、CIGR2は転写調節に関与する遺伝子であると推測した(図1)。 イネ培養細胞における両遺伝子の発現は活性の強いジベレリンの一つ、GA3処理によって誘導された。同様の結果は緑葉においても観察された(図2)。5種のジベレリンについて検討した結果、イネ培養細胞においては遺伝子発現と生物活性の間に明確な相関性が認められた(図3)。 両遺伝子のキチンオリゴ糖による発現誘導はその重合度に依存した。図3の結果を考え合わせると、キチンオリゴ糖及びジベレリンのシグナルはイネ培養細胞に存在する受容体によって認識されこれら両遺伝子に伝えられるものと考えられた。 両遺伝子のジベレリンによる発現誘導はラベンダスチンA(タンパク質リン酸化酵素阻害剤)やオカダ酸(タンパク質脱リン酸化酵素阻害剤)によって阻害されるのに対しキチンオリゴ糖による発現誘導にはこれらの阻害剤は影響を及ぼさなかった。この結果は両物質から遺伝子発現に至る細胞内シグナル経路は異なるものであることを強く示唆した。
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成果の活用面・留意点 |
- キチンオリゴ糖エリシターに応答するCIGR1、CIGR2の両遺伝子は活性型ジベレリンにも応答することが明らかになった。キチンオリゴ糖エリシター及びジベレリンにどのような遺伝子が応答するかを明らかにしていくことによってこれらの生理活性物質の未知の生物機能解明の手がかりを得ることが期待される。
- CIGR1、CIGR2のプロモーターはキチンオリゴ糖及びジベレリンによって誘導されると考えられるため、誘導型プロモーターとしての利用が期待される。
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カテゴリ |
たまねぎ
にんじん
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