シアン耐性呼吸・末端酸化酵素遺伝子のストレスによる発現誘導

タイトル シアン耐性呼吸・末端酸化酵素遺伝子のストレスによる発現誘導
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2003
研究担当者 清田誠一郎
矢崎芳明
発行年度 2001
要約 シアン耐性呼吸・末端酸化酵素の遺伝子をニチニチソウからクローニングした。この遺伝子は細胞質酸性化を引き起こす各種薬剤によって発現誘導された。ストレス応答に伴う細胞質酸性化と遺伝子発現機構のモデル系としての有用である。
キーワード シアン耐性呼吸、ストレス、遺伝子発現、プロモーター、細胞質酸性化
背景・ねらい 低酸素、低温等の環境ストレスによって植物の細胞質の酸性化が引き起こされる。最近、細胞質酸性化が、いくつかのストレス関連遺伝子遺伝子の発現の引き金となっていることが示唆されている。そこで、細胞質の酸性化防御機構で重要役割を担っていると考えられるシアン耐性呼吸の末端酸化酵素alternative oxidase(AOX)の遺伝子発現をモデル系として、細胞質酸性化とAOX発現誘導機構との関係について解析を行い、ストレス耐性植物の育成やストレスに強い栽培法の開発のための基礎的知見を得る。
成果の内容・特徴
  • ニチニチソウのAOXのcDNA(1.4kb)およびゲノムDNAクローン(11kb)を単離し、塩基配列を決定した。Southern blottingの結果、ニチニチソウAOXはシングルコピーであった。これは、イネ、シロイヌナズナ、ジャガイモ等では複数コピーが存在し、それぞれのAOXについて発現部位や時期の違いから、役割分担が示唆されているのと対照的である。cDNAとゲノムクローンの比較によって、3つのイントロンが同定された。イントロンの挿入位置は、他の植物のAOXと共通であった。Oligo-Cap法で決めた転写開始点は、翻訳開始点のATGから122bp上流であった。
  • 単離したゲノムDNAの転写開始点上流をGUSレポーター遺伝子に繋いだベクターをニチニチソウ培養細胞にパーティクルガンで導入し、一過的発現を測定した。実験に用いた転写開始点上流領域からの長さが2.31-0.48kbのDNA断片では、長いもの程、活性が強かった。特に2.31kbの長さのものは、対照に用いたCaMV 35Sプロモーターより強い発現を示した。(図1)
  • 植え継ぎ後3日目の細胞では、サリチル酸(SA)、プロピオン酸、バナジン酸ナトリウム、n-プロピルガレート(n-PG)等の薬剤の添加によってAOXの発現が誘導された。SA濃度が、1mMや0.5mMと高い場合には、発現に1-6時間のラグが見られた。(図2)0.1mM プロピオン酸の添加では、1時間後と6時間後のような2つのピークを示した。AOXの阻害剤であるn-PGを除く他の薬剤については、NMRによる解析で添加による細胞質の酸性化が確認された。細胞内のpHを介した共通の機構によってAOXの発現が誘導されている可能性が示唆された。これら薬剤による誘導系は、ストレスによるストレス誘導性遺伝子の発現調節機構のモデルとして利用できる。
  • 成果の活用面・留意点
    1. AOXプロモーターは、一過的発現解析で強いプロモーター活性を示したので、ストレス誘導性の高発現プロモーターとしての利用が可能と思われる。実際に使用するためにはストレス誘導性を示すシス配列の同定などの解析が必要である。
    2. AOXを過剰発現、または、発現を押さえた形質転換体を作出中である。AOXのストレス耐性へ役割の解明およびストレスによる遺伝子発現誘導機構の解析のモデル植物としての活用が期待される。
    3. 細胞に与えるSA濃度が、1mMの様に高い時に見られるAOX遺伝子発現誘導の遅れは、呼吸阻害によることがわかった。この際、好気発酵とそれに伴う細胞内デンプンの急速な分解がみられた。この現象とSAの生理活性との関連の解析が期待される。
    カテゴリ ばれいしょ 薬剤

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