タイトル |
HEGSによるイネとオオムギの高密度マップの短期作製 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2000~2004 |
研究担当者 |
佐藤和広
清水顕史
川崎信二
谷坂隆俊
武田和義
堀清純
|
発行年度 |
2001 |
要約 |
我々が開発したHEGS(High Efficiency Genome Scanning:高能率ゲノム走査法)システムの適用により、イネとオオムギのそれぞれで1000以上のマーカーからなる高密度分子マップがそれぞれ1名の学生により4-6ヶ月程度で作製された。これにより、BACライブラリーと合わせて任意の生物におけるゲノム研究が研究室単位で可能になった。
|
キーワード |
HEGS、高密度地図、短期作製、イネ、オオムギ
|
背景・ねらい |
高密度マップはゲノム・分子遺伝学研究や作物等の形質のQTL分析の基礎であるが、それぞれの研究目的及び研究材料に適合した高密度マップはこれまで、多数の人員と多額の費用による数年にわたる作製期間が必要とされてきた。本研究では我々の開発したHEGS (High Efficiency Genome Scanning:高能率ゲノム走査法)システムを活用して各種ゲノム分析を高効率で行うための基礎となる高密度地図を1名で数ヶ月でかつ低コストで作製するためのシステムの開発を目指した。これにより、各種作物の高密度地図が気軽に作製され、作物品質の改良が効率よく短期間かつ低コストで行われる一方、生物学的に興味深い形質の原因遺伝子の存在部位が、ゲノム上で直ちに特定でき、イネなどゲノムの塩基配列が既に明らかになっている場合には、直ちにそのゲノム配列上での位置が明らかになることを目指した。
|
成果の内容・特徴 |
イネではjaponica種の銀坊主とindica種のKasalathの交配によるF9のRecombinant Imbred Line(組換え近交系:RIL)94系統を用いて、1枚で100レーン泳動可能なゲル8枚を同時に流せる800レーンのHEGSシステムにより、主にHEGS/AFLPによって1プライマーペア(1ゲル)当たり約5-7本の多型バンドを得ることができた。これにより、1日当たり40-60本の多型バンドを記録することができ、一人で2ヶ月ほどで1065マーカーのHEGS/AFLPマップデータを蓄積することができた。これと既存のSSRマーカー63(1回に24マーカー泳動可能)をlandmarkとすることにより5-6ヶ月で1128マーカーからなる、全長1777 cMのイネの地図が完成した(図1)。 このマップから適当なプライマーペアを選ぶことにより、83プライマーペアで全体の92%をカバーする233マーカーの地図ができるが、これを用いれば2週間前後の泳動により、極めて高効率のQTL分析が可能になる。 同じくオオムギでも赤かび病抵抗性のRussia 6と感受性のH.E.S.4との交配によるF9のRILを用いて、642のAFLPマーカーと34のSSRマーカーからなる全長1595cMの高密度地図を一人の大学院生により4ヶ月ほどで作製することができ、6ヶ月で1000マーカー以上になる予定である(図2)。イネの日印(japonica/indica)種間での多型率が15%程度にも及ぶのに対して、オオムギではこの品種間に限らず多型率が4-5%と小さいが、地図の作成に特に問題はなかった。
|
成果の活用面・留意点 |
- 任意の作物についてこのシステムは応用可能であり、既にマメ科のモデル植物ミヤコグサやピーマンで同様に1000マーカー以上の高密度地図の作成が進行している。
- このシステムは遺伝子の単離のための特定領域での精密マッピングにも応用可能で、バルク分析では4096プライマーペアでの2-3万マーカーの地図での分析に匹敵する特定遺伝子周辺の精密地図を2-3ヶ月で同様に作成することが可能である。特に、染色体の動原体領域のように組換えが抑制され、反復配列の多いような場所についてもこのシステムにより分析が可能になった。
|
カテゴリ |
大麦
抵抗性
低コスト
ピーマン
品種
|