タイトル |
代謝異常マウスのQTL解析 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2001~2002 |
研究担当者 |
須藤淳一
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発行年度 |
2002 |
要約 |
マウスを使用し、インスリン非依存型糖尿病や高脂血症などの代謝異常症のQTL解析を行った。特に、1、8、9番の各染色体に疾患QTLが反復して同定された。責任領域中には候補遺伝子も多く、それらの幾つかは表現型値と相関する多型を示した。
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キーワード |
コレステロール、トリグリセリド、インスリン非依存型糖尿病、QTL解析
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背景・ねらい |
複数遺伝子により支配される複雑形質であると考えられているインスリン非依存型糖尿病や高脂血症などの代謝異常症のQTL解析を行う。様々なマウス系統中には遺伝的に代謝異常と認められるものが多数存在するため、原因遺伝子同定に好適である。複数系統間で相互にF2マウスを作出・解析することにより、候補遺伝子座における特定の対立遺伝子の効果が推定でき、原因遺伝子変異の同定が容易になる。
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成果の内容・特徴 |
- 遺伝的に肥満・インスリン非依存型糖尿病・高脂血症を示すKKおよびKK-Ay マウスにおいて、これら疾患の発症に関与する原因遺伝子を同定するため、C57BL/6J×KK-Ay F2マウスを用いてQTL解析を行い上記の各病態に関する複数QTLを同定した。耐糖能異常に関与するQTLを8番染色体(Giq1、図1)に同定した。血漿コレステロール濃度に関するQTLを1番染色体(Cq1およびCq2)に、および9番染色体(Cq4)に同定した。また、血漿トリグリセリド濃度に関するQTLを9番染色体(Tgq1)に同定した。各QTL責任領域中に存在する候補遺伝子の解析を行った結果、Cq2領域に存在するアポリポタンパク質A-II遺伝子型が血中コレステロール濃度と強く相関することが明らかとなった。
- KK×RR F2マウスにおいて、コレステロールQTLを9番染色体(Cq5、図2)に、また、トリグリセリドQTLを8番染色体(Tgq2、図1)に同定した。コレステロールQTLは上述のC57BL/6J×KK-Ay F2での9番染色体Cq4領域にほぼ一致したことから、9番染色体近位部へのコレステロールQTLの存在が確認された。また、この領域には1番染色体Cq2座と同様に多くのアポリポタンパク質遺伝子が存在するため、これらを候補遺伝子と考え、解析中である。8番染色体Tgq2座はC57BL/6J×KK-Ay F2において同定されたGiq1座と重複した。耐糖能異常とトリグリセリド濃度の両者に効果を持つ遺伝子を検索・解析したところ、リポタンパク質リパーゼ遺伝子については少なくともC57BL/6JおよびKK間で多型を認めた。
このように、関連した別形質のQTL解析の結果から、候補遺伝子を推定・解析するとともに、幾つかについては、各染色体責任領域を正常のマウス系統の遺伝背景下に戻し交配し、その効果を確認した。
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成果の活用面・留意点 |
相互にF2を作出する系統数を増加させることにより、遺伝子同定はより容易になると考えられる。今後はC57BL/6J×RR F2マウスを作出し、同様の解析を行う。また、各QTL領域に存在する候補遺伝子を解析する。
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カテゴリ |
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