Bactrocera属ミバエ類の分子系統解析と分子分類法の開発

タイトル Bactrocera属ミバエ類の分子系統解析と分子分類法の開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 1999~2003
研究担当者 村路雅彦
発行年度 2002
要約 植物検疫上の最重要害虫であり、分類や同定に混乱が見られるBactrocera属ミバエ類について、アジア太平洋域に生息する主要種のミトコンドリアDNAの塩基配列における多様性を解析すると共に、それらのデータにもとづく害虫種の分子分類法を開発した。
背景・ねらい ミバエ科の一群、Bactrocera属は、ウリミバエ、ミカンコミバエ、クイーンズランドミバエ等の植物検疫上の重要害虫をはじめ極めて多くの種を含む。本属には外部形態の酷似した近縁種のグループが多数含まれており、またメス成虫の形態的特性が不明瞭なものが多いことなどから、種の識別や同定が困難な場合が少なくない。さらに、植物検疫の現場では、外見では同定が困難な卵、幼虫、蛹、死体破片などが検出されることも多い。
本研究では、これらの問題を解決し、現場で利用できる新しい種識別法を開発するため、多数の種についてミトコンドリアDNAの塩基配列を決定し、これにもとづく分子系統解析を実施するとともに、PCR-RFLPによる分子分類法について検討した。
成果の内容・特徴
  1. アジア太平洋域に分布する主要なBactrocera属ミバエ類27種41系統を入手し、個体ごとにミトコンドリアDNAの約3kbの塩基配列を決定した。
  2. 上記のDNA塩基配列データをもとに、DNA分子内の各域の2次構造等を加味した分子系統解析を実施した。その結果、信頼性の高い分子進化系統樹を得ることができた(図1)。本解析よりB.(Bactrocera)やB.(Zeugodacus)などの亜属やBactrocera dorsalis種群などの既報の分類群の単系統性に疑念の余地のあることが判明した。Bactrocera dorsalis種群の一部では姉妹種間で遺伝的交流が生じていることが示唆された。
  3. 日本への侵入が懸念される18害虫種について、DNA塩基配列データから種の識別に利用可能なDNA領域と制限酵素を検索し、PCR-RFLPによる分子分類法を開発した(図2)。要点は、解析の簡素化を図るため、PCRによってミトコンドリアDNAの多型的領域を4つのセクションに分割したことである。図3はバンドパターンの比較による種識別の流れと、検出されるバンドパターンを示す。いずれの種も少数の制限酵素を用いたバンドパターンの解析で識別・同定できることが示されている。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究により得られた分子分類法は、簡単な機材さえあれば、植物検疫の現場などでそのまま利用することができる。
  2. 今後より多くのミバエ類の塩基配列を調べることで、本分子分類法の有用性が向上すると考えられる。
カテゴリ 害虫 植物検疫

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