タイトル |
ニッコーマイシンZによる核多角体病ウイルスの感染促進 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2002~2005 |
研究担当者 |
新川徹
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発行年度 |
2002 |
要約 |
抗生物質の一種であるニッコーマイシンZをカイコに投与すると、核多角体病ウイルスに対する感受性が飛躍的に高まることを明らかにした。同剤を10ppm以上含む飼料を食下させることにより、約400万倍の感受性増大が認められた。
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キーワード |
ニッコーマイシンZ、核多角体病ウイルス、微生物農薬、害虫防除
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背景・ねらい |
昆虫病原ウイルスを利用した、農業害虫の効率的防除法の開発の一環として、ウイルスの感染を促進する化合物が探索され、いくつかの化合物に感染促進効果が認められている。しかしながら、いずれも高濃度で使用した場合のみ効果を現わすものであり、実用的な低用量で効果を示すものはいまだ見い出されていない。以上のような観点から、ごく低濃度での使用において十分なウイルス感染促進効果を示す化合物を探索した。
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成果の内容・特徴 |
- 農業害虫として問題となるのは鱗翅目昆虫が圧倒的に多い。そこで、実験昆虫としての有用性が確立しているカイコを鱗翅目昆虫のモデルとして用い、カイコに対する核多角体病ウイルス(NPV)の感染を促進する化合物を探索した。
- 4齢カイコに抗生物質の一種であるニッコーマイシンZを投与すると、NPVに対する感受性が飛躍的に上昇することを発見した。多角体の半数致死量を指標としてNPVに対する感染促進効果を調査したところ、同剤を3ppmに含む飼料を食下した場合は9万4千倍、10ppmの場合は約400万倍の感染促進効果が認められた(表1)。
- ニッコーマイシンZの単独投与はカイコに対し致死作用を示すことはなく、投与された3齢および4齢カイコは成長を続け、次齢へと脱皮した(表2)。
- ニッコーマイシンZの使用は、これまでに報告された感染促進物質の中で最も低濃度で顕著な効果を現わすことにおいて画期的である。本研究結果は、昆虫病原ウイルスを用いる害虫防除にブレイクスルーをもたらす可能性がある。
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成果の活用面・留意点 |
- ニッコーマイシンZもしくはその誘導体をウイルス農薬の助剤として用いることにより、ウイルス農薬の広範な使用が実現することが期待される。これは総合的害虫管理(IPM)の発展につながるものと考えられる。同剤を利用した防除体系の構築へ向けた実用化研究の推進が求められる。
- ニッコーマイシンZがNPVの感染を促進する作用機作の解明が必要である。それにより、効率的な使用法、製剤としての適切な形態の検討、より効果の高い化合物の探索等が可能となる。
- バキュロウイルスベクターとカイコを利用した、有用物質生産システムへの応用が考えられる。現在、カイコにベクターを接種する方法として、手作業による皮下注射が一般的である。ニッコーマイシンZを投与してウイルス感受性を高めたカイコを使用することにより、ベクターの経口接種が可能となり、同システムによる物質生産規模の拡大が可能になると期待される。
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カテゴリ |
病害虫
カイコ
害虫
農薬
防除
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