タイトル |
DNAマイクロアレイによるキチンオリゴ糖エリシター応答性イネ遺伝子の解析 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2000~2003 |
研究担当者 |
デイ
ロバート
賀来華江
岸本直己
菊池尚志
佐々木卓治
坂田克己
山本公子
秋本千春
渋谷直人
真保佳納子
中村桂子
藤井文子
南 栄一
矢崎潤史
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発行年度 |
2002 |
要約 |
イネが病原菌感染に対して展開する抵抗性反応はキチンオリゴ糖エリシター処理によっても再現できる。この系を用いてDNAマイクロアレイによりエリシター応答性遺伝子を単離・同定するとともにカルシウム依存性プロテインキナーゼ等の遺伝子について発現様式を解析した。
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キーワード |
キチンオリゴ糖、エリシター応答性遺伝子、DNAマイクロアレイ、イネ
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背景・ねらい |
エリシター応答を分子レベルで理解することは植物の持つ病害抵抗性の理解、さらにその育種への応用を考える上できわめて重要である。イネ培養細胞はキチンオリゴ糖エリシターを鋭敏に認識し一連の抵抗性反応を展開する。この過程において遺伝子発現変化を網羅的に解析することは抵抗性応答の分子的理解に必須である。本研究ではDNAマイクロアレイを用いて本エリシターによって発現が変化する遺伝子を網羅的に同定するとともにその中で生体調節に重要と考えられるカルシウム依存性プロテインキナーゼ遺伝子について発現様式を解析した。
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成果の内容・特徴 |
- 約9,000種類のイネESTを用いて作成されたDNAマイクロアレイをプローブとしてキチン7糖処理0分と120分の遺伝子発現パターンを比較し、250種類のエリシター応答性遺伝子を同定した。
- これらのESTに付けられたアノテーションに従って機能別に分類を試みたところ、一次代謝に関与するもの、二次代謝に関するもの、遺伝子の転写に関与するもの、遺伝子の翻訳に関与するもの、防御応答遺伝子として知られているもの、信号伝達に関与するもの等が見いだされた(図1)。
- これらのうち、遺伝子の翻訳に関与するリボソームタンパク質についてはそのほとんどがエリシター処理によって発現が急激に減少するという特徴を示した。一方、二次代謝系の酵素遺伝子はエリシター処理によって発現が誘導された。また一次代謝系酵素のうちアルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素のような嫌気代謝に関与するものや、ペントースリン酸回路のキー酵素の一つである6-ホスホグルコン酸脱水素酵素遺伝子の発現が誘導された。このことは防御応答の開始とともに代謝系のスイッチがそれまでの好気的呼吸から嫌気的呼吸に切り替わることを示している。
- 6種類のカルシウム依存性プロテインキナーゼを含む22種類の遺伝子についてノーザン法でエリシターに応答することを確認した。これらの22種類の遺伝子について、プロピオン酸、シクロヘキシミド、ジャスモン酸、カリクリンAの処理によるストレス付加、及び細胞に傷害を与えたときの発現変化について解析したところ、それぞれの処理に対する応答は遺伝子によって異なっており、統一した傾向は認められなかった。
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成果の活用面・留意点 |
- 今回同定したエリシター応答性遺伝子についてはそれがコードするタンパク質の構造をイネ全ゲノム配列決定等の成果を活用しつつ明らかにしていく必要がある。
- 今回同定したエリシター応答性遺伝子が250種類にも上るため、その中で生体防御応答に本質的に重要な機能を有する遺伝子を同定していく必要性がある。
- これらのエリシター応答性遺伝子の同定及び発現解析結果については論文として発表した。
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カテゴリ |
育種
くり
抵抗性
病害抵抗性
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