X線解析法によるイネ萎縮ウイルスの立体構造

タイトル X線解析法によるイネ萎縮ウイルスの立体構造
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2003
研究担当者 水野洋
藤本瑞
発行年度 2003
要約 イネ萎縮ウイルス(RDV)の立体構造をX線解析法により解明した。RDVは780個の外殻タンパク質と180個の内殻タンパク質とで構成される2重殻をもち、それらが巧妙に巨大ウイルスを構築している。
キーワード ウイルス、X線解析、シンクロトロン、イネ萎縮ウイルス、RNA
背景・ねらい RDVは2重殻構造を持つ巨大ウイルスであり、内部に遺伝子本体である12本の2本鎖RNAを含む。純化したRDV試料を用いて結晶化に成功した後、シンクロトロン(高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリー)による膨大なX線データの収集を行い、これらのデータを用いて結晶構造解析を行い、RDVの立体構造を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 2重殻構造を持つRDVの3.5Å分解能での構造の全容が明らかになった。
  2. 2重殻のうち外殻は46Kダルトンのタンパク質(P8)の780個がT=13の対称で配列していた(図1)。内殻は114Kダルトンのタンパク質(P3)が180個、2量体(図2)を単位としてT=1の対称で配列していた。
  3. 図1の色分けされた3角形は外殻タンパク質P8の3量体であり、そのうちicosahedral3回軸上にある3量体(青色)は内殻タンパク質P3と強固に結合していた。
  4. 内殻タンパク質P3は2量体を形成し、モノマー(赤)のN末端が他のモノマー(緑)に挿入して強固に結合していた(図2)。RDVの構築は、先ずP3の2量体ができ、これを基に内殻球ができ、次にP8の3量体(図1の青色の3角形)が結合し、さらにside-by-sideの結合様式で外殻が埋まり2重殻を形成するという構築原理を提案した。
  5. 巨大ウイルスのX線解析は他に2例あるが、RDVが精度、分解能の点で最も高い。

図1

図2
成果の活用面・留意点 立体構造を利用したウイルス感染機構の解明が期待される。このうち興味深いものとしては、ウイルス粒子内のRNA複製装置(RNAポリメラーゼ等の酵素群からなる)の解明、複製されたRNAが5回軸回りの穴を通って搬出される機構の解明などが期待される。また、抗体との結合に関わる外殻蛋白質表面構造の同定が可能になる。X線解析で決定した構造データはすでにProtein Data Bankに登録した(コード番号:1UF2)。
    図表1 226381-1.jpg
    図表2 226381-2.jpg
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