タイトル |
改変シロアリセルラーゼの大腸菌による大量生産技術 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2003~2006 |
研究担当者 |
渡辺裕文
倪金鳳
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発行年度 |
2004 |
要約 |
新規の酵素素材として期待される食材性昆虫起源セルラーゼはこれまで微生物等による大量発現・大量生産が難しかったが,4種類のシロアリセルラーゼcDNAのランダムな相同組換えを行うことにより得られたキメラcDNAから大腸菌での大量発現に適したクローンを得て,応用素材化へのめどをつけた。
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キーワード |
シロアリ、セルラーゼ、シャフリング、大量発現
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背景・ねらい |
シロアリ内源性セルラーゼは、セルラーゼ研究分野の新たな素材として大量発現技術の確立が望まれている。本酵素は糖質分解酵素ファミリー9に属し、細菌起源の同族セルラーゼとアミノ酸配列上で30%程度の相同性を示すが大腸菌等による大量発現は難しい。この問題は単に大腸菌型のコドンに遺伝子を書き換えることでは解決しなかった。このため4種のシロアリセルラーゼcDNA(アミノ酸配列上での相同性約80%以上)に対しランダムな相同組換え(ファミリーシャフリング)を行ってキメラcDNAライブラリーを作製し、その中から異種大量発現に適したクローンを選抜することを目指した。
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成果の内容・特徴 |
- ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、タカサゴシロアリ(Nasutitermes takasagoensis)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)および豪州産イエシロアリ近縁種(C. acinaciformis)由来の4種セルラーゼcDNAに対するファミリーシャフリングで得られたキメラcDNAライブラリーをクローニング用通常ベクターで発現・選抜した。選抜されたクローンを親株に加えて再シャフリングしたのち再選抜し、大量発現ベクターによる再々選抜を経て活性のあるセルラーゼが大腸菌で大量発現する改変クローンを得た(図1)。
- 得られた改変セルラーゼ組込大腸菌は可溶性画分に大量の活性セルラーゼを蓄積した(図2)。生産されたセルラーゼには6xHisタグがN-末端に付加されており、His-tagアフィニティーによる簡便な精製が可能であった(図3)。また、塩基配列から予測されるアミノ酸配列の相同性から(図4)、改変セルラーゼが天然型シロアリセルラーゼの高次構造を維持していると予測された。
- 改変セルラーゼのタンパク単位量あたり活性は80-500units/mgと精製ヤマトシロアリセルラーゼ(80units/mg)と同等またはそれ以上であり、また、シロアリセルラーゼの基本的特徴を維持していた。
- 本成果は異種発現が難しい真核生物由来相同遺伝子同士のファミリーシャフリングで異種大量発現が可能な改変遺伝子を構築したおそらく最初の例である。
図1
図2
図3
図4
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成果の活用面・留意点 |
- 大腸菌で生産した改変シロアリセルラーゼは凍結・融解処理により活性を失うことがあり、保存性の向上および保存方法の確立が今後の課題である。
- 改変セルラーゼは結晶性セルロースに対して分解力をもたないため、衣料用洗剤添加剤や紙・パルプ・繊維の改質・脱染用酵素など酵素がセルロースの結晶性部分を分解しないことが必要である分野には好適な材料と考えられる。
- DNAシャフリング技術は中国Maxgen社が特許を保持しており、本研究成果の商業的な利用にあたっては、大腸菌での大量発現に関係したアミノ酸配列上の変異のみを天然型cDNAに加えた人工遺伝子を構築して用いるなど、シャフリングで得られた改変cDNAを直接用いることを避ける必要がある。また、シロアリ類セルラーゼの基本構造に関する特許は当研究所および農業・生物系特定産業技術研究機構が保持している(平9特3030349号)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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