キノコ由来アスパラギン酸プロテアーゼのX線結晶構造解析

タイトル キノコ由来アスパラギン酸プロテアーゼのX線結晶構造解析
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 1999~2004
研究担当者 金子哲
小林秀行(食総研)
水野洋
藤井佳史(開放融合)
藤本瑞
発行年度 2004
要約 チーズの製造に優れた酵素特性を持つ凝乳酵素の一つであるキノコ(Irpex lacteus)由来アスパラギン酸プロテアーゼの立体構造をX線結晶解析により決定し、本酵素に特有のアミノ酸認識部位など、基質認識機構を明らかにした。
キーワード X線結晶解析、凝乳酵素、アスパラギン酸プロテアーゼ
背景・ねらい アスパラギン酸プロテアーゼは、至適pHが酸性下にあり、活性中心に2つのアスパラギン酸を持つタンパク質加水分解酵素であり、古くからチーズや醤油の製造に用いられてきた。キノコ(Irpex lacteus、和名ウスバタケ)由来アスパラギン酸プロテアーゼは、タンパク質加水分解活性に対して凝乳活性の比率が高く、チーズの製造において優れた特性を持ち、繊維状チーズ生産用凝乳酵素としての利用が期待されてきた。そこで、蛋白工学的改良の分子基盤を得るためX線結晶構造解析により本酵素の立体構造を決定し、本酵素の酵素特性と構造の関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. キノコ由来アスパラギン酸プロテアーゼの結晶化条件を確立し、良質の結晶を得ることに成功した(図1)。
  2. キノコ由来アスパラギン酸プロテアーゼのX線結晶解析を行い、1.3Å分解能での結晶構造解析に成功した。
  3. キノコ由来アスパラギン酸プロテアーゼの立体構造は、ペプシンやレニンなどの従来のアスパラギン酸プロテアーゼと同じく、主として逆平行βシートからなるβタンパク構造をとっており、ほぼ同じ大きさのN末端側ドメインとC末端側ドメインの2つのドメインが全体として双葉のように配されている。酵素触媒部位は、2つのドメインの間にあり、基質はそこに挟まれて切断される(図2)。
  4. プロテアーゼ阻害剤であるペプスタチンとの複合体の構造として立体構造を決定したことから、酵素触媒部位の基質認識機構を詳細に明らかにした(図3)。
  5. キノコ由来アスパラギン酸プロテアーゼは、本酵素に特徴的な2つの疎水性アミノ酸を認識する結合部位(図3、P3、P4)を持ち、この部位が基質切断場所を限定する。そのため、本酵素はタンパク質加水分解活性に対して凝乳活性の比率が高くなり、チーズ生産用凝乳酵素としての特性を発揮できることが明らかとなった。

図1

図2

図3
成果の活用面・留意点 本酵素の立体構造情報が得られたことにより、分子設計により高機能、高効率酵素の開発が可能となり、食品産業などへの応用が期待される。また、酵素の特性を発揮する部位が明らかになったことから、今後新規凝乳酵素を探索する際の選別判断基準として、本酵素の立体構造情報の利用が期待される。
図表1 226405-1.jpg
図表2 226405-2.jpg
図表3 226405-3.jpg
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