タイトル | 低温に特異的に応答するイネS-アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子 |
---|---|
担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2001~2005 |
研究担当者 |
秋山 高 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 生理活性物質の一種ポリアミンの生合成に必須な酵素、S-アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子は、日本型イネ「ゆきひかり」ではその発現が低温処理によって特異的に増加するが、インド型イネ「TKM9」では増加しない。 |
キーワード | イネ、低温応答性遺伝子、S-アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子(SAMDC)、ポリアミン生合成、遺伝子発現の品種間差異 |
背景・ねらい | 冷涼地の稲作では障害型冷害や幼苗期の成長遅延がほぼ数年に一度発生するため、穂ばらみ期耐冷性や幼苗期耐冷性の改良は、農業上の重要な課題である。我々はイネの低温誘導性遺伝子の中に、ポリアミンの生合成に関与するS-アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子(SAMDC )を見い出した。ポリアミンは成長や分化に必要であるばかりでなく、植物のストレス耐性の獲得に重要な機能を果たすことが知られている。本研究では、SAMDC 遺伝子をイネの耐冷性の改良に利用することを目標に、その発現解析を行って低温ストレスとの関連を調べるとともに、低温耐性が異なる日本型イネ及びインド型イネにおけるSAMDC 遺伝子の低温応答性の差異を解析する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 単離したイネSAMDC遺伝子は、遺伝子データベース上のトウモロコシ(Y07767)、コムギ(AAD17232)及びイネ(XP_466676)のSAMDC 遺伝子と80%、82%及び82%のアミノ酸レベルの相同性を示す。 2. 開花期のイネ及び発芽7日目の苗の各器官では、環境ストレスがない状態でも多くの器官でSAMDC 遺伝子が恒常的に発現する(図1)。 3. イネSAMDC 遺伝子は環境ストレス処理の中では、5℃の低温ストレスに特異的に応答して発現量が増大する(図2)。 4. 日本型イネ「ゆきひかり」では5℃の低温によってSAMDC 遺伝子の発現量が経時的に増加するがインド型イネ「TKM9」では低温によるSAMDC 遺伝子の発現量の変化はわずかである(図3)。 5. インド型イネ「TKM9」では5℃の低温によって、SAMDC が関与する反応の産物であるスペルミジが速やかに減少するが、日本型イネ「ゆきひかり」ではその量はむしろ増加する(表)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 日本型イネ「ゆきひかり」とインド型イネ「TKM9」のSAMDC遺伝子の低温応答性の違いの発見は、ポリアミン代謝が関与するイネの低温耐性機構の解明の糸口となる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 耐寒性 データベース 凍害 とうもろこし 品種 |