タイトル | ルーメン細菌における糖の輸送機構 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 1997~2001 |
研究担当者 |
梶川博 甘利雅拡 柾木茂彦 |
発行年度 | 2001 |
要約 | ルーメン混合細菌おけるグルコースおよびセロビオースの取り込みは、主としてホスホエノールピルビン酸ホスホトランスフェラーゼ系(PEP-PTS)によって行われるが、それ以外にも促進拡散系やナトリウムとの共輸送系、およびATP依存性の能動輸送などが関与している。 |
キーワード | 家畜生理・栄養、乳牛、ルーメン細菌、膜輸送、糖、PEP-PTS |
背景・ねらい | ルーメン内は通常、微生物の増殖に必要な栄養基質の濃度が低く、エネルギーを消費してこれら基質の取り込みを行うことになる。最初のエネルギー要求系である物質の輸送系は、物質代謝の律速過程になるものと考えられ、その様式と特性を解明することは、個々の細菌がその生態系で生存していくための戦略を理解するうえで極めて重要なポイントとなる。 |
成果の内容・特徴 | 1. ルーメン混合細菌におけるグルコースの取り込みは、主としてエネルギー効率の高いPEP-PTSによって行われることが、阻害剤を用いた試験(表1)およびPTS依存性のNADH酸化測定により判明した。 2. また、グルコースの取り込みにはナトリウム共輸送系が一部加わることが示された(表1、2)。さらにルーメン内のグルコース濃度が上昇するにつれ、速度の速い促進拡散が働くことも示唆された(図1、図2)。 3. 同様な手法を用いて、ルーメン混合細菌のセロビオース取り込みには主としてPEP-PTSが働き、さらにATP依存性の能動輸送も行われることが示された(図2)。 4. ルーメン混合細菌におけるセロビオースの利用は、細胞外でセロビアーゼによりグルコースへと分解されたのち取り込まれる比率が高いものの、ルーメン内のセロビオース濃度が低い場合にはセロビオースそのものとして取り込まれる割合が高まることが示された。 5. グルコース輸送はシュクロース、マンノースおよびフラクトースの存在により活性が低下したが、セロビオース輸送はグルコースによってのみ抑制された。 6. ルーメン細菌におけるキシロースの取り込みは、単一の輸送系 (monophasic) によるものと考えられたが、活性の低さからその様式と特性を同定するには至らなかった。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ルーメン内の糖類の輸送および利用はPEP-PTSに代表される「効率」を中心に展開されると考えられる。 2. しかしその他の輸送系も弱いながらも存在することは、「速度」「親和性」「簡易性」など種々の特性を使い分けるルーメン内の多様性を示唆している。 3. また本研究では、個々の細菌種での成果がそのままルーメン全体の生態系に敷衍され得ないことも明らかとなった。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 乳牛 輸送 |