タイトル | 2シーズン放牧黒毛和種育成牛の粗飼料多給肥育 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
山口学 木戸恭子 林義朗 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 生後5ヶ月齢までおよび11~17ヶ月齢の2シーズン放牧と濃厚飼料を体重の1.1~1.3%に抑えた粗飼料多給型の肥育により、黒毛和種去勢牛を29ヶ月齢で650kgまで肥育できる。 |
キーワード | 飼育管理、肉用牛、放牧、育成、肥育、粗飼料多給 |
背景・ねらい | BSEの発生を始めとして輸入飼料に起因して畜産物の安全性を脅かす問題が顕在化する中で、自給飼料を利用する畜産の振興が重要となってきている。従来、自給飼料の利用が少ない黒毛和種の飼養に対しても、自給飼料を多給した飼養が検討される必要がある。そこで、放牧による肥育素牛生産と粗飼料を多給した肥育を提案する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 生時よりの飼育方法を示す。春に放牧地で分娩させ、5ヶ月齢まで母子ともに昼夜放牧した。ただし、母牛の乳量不足を補うために2~10ヶ月齢まで体重の1%量の濃厚飼料給餌を行った。離乳および去勢は終牧時(5ヶ月齢)に実施した。次年度春(11ヶ月齢)より、放牧区(4頭)は放牧地にて、舎飼区(2頭)は舎飼にてそれぞれ濃厚飼料を無給与で飼育した。 2. 2シーズン目の放牧育成(11~17ヶ月齢)では、乾草のみを給与した舎飼育成よりも日増体量が大きい(図1)。このことから、生草の栄養価は乾草より高く、放牧に伴うエネルギーの損失を補うことができることが分かる。粗飼料を高度利用するための育成技術として放牧は有効である。肥育期間の増体は両区とも同様であり、放牧区では730kg 超の個体も現れる。 3. 採食量を表1に示した。肥育後期の濃厚飼料給与量は体重の1.1~1.3%と低く設定する。肥育前期・後期とも粗飼料(オーチャード主体乾草)の採食が盛んであり、それぞれ体重の1.0%、0.4%の採食が認められる。 4. 放牧区の肥育期間367日間の濃厚飼料給与量は1頭あたり2,384kg(6.50kg/日)であった。2シーズン目の放牧をせず11ヶ月齢より濃厚飼料を体重比1.2%給与で肥育した場合と比較すると、放牧区の方が濃厚飼料量を21.6%節減できる。 5. 解体成績(表2)では、枝肉歩留、ロース芯面積、皮下脂肪厚およびばらの厚さは、放牧区が舎飼区より大きい傾向が見られ、枝肉歩留は63.5%と高めである。脂肪交雑は2.5~3.0と低かったが、濃厚飼料を抑えたことによりコストが削減できることを考慮すると、肥育の一方式として可能性がある。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 黒毛和種の粗飼料多給肥育の一方式として活用できる。 2. 放牧スケジュールは子牛の分娩時期に合わせて変更する。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | コスト 肉牛 ばら |