家畜排せつ物の堆肥化処理からのアンモニア発生を低減する微生物

タイトル 家畜排せつ物の堆肥化処理からのアンモニア発生を低減する微生物
担当機関 (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所
研究期間 1999~2002
研究担当者 羽賀清典
花島大
黒田和孝
福本泰之
発行年度 2002
要約 アンモニウム資化能の高い高温性細菌Bacillus sp. TAT105株を添加して家畜排せつ物の堆肥化処理を行うと、処理過程でのTAT105株の顕著な増殖により、アンモニア発生が低減される。
キーワード 畜産環境、豚、堆肥化処理、アンモニア発生低減、高温性細菌
背景・ねらい
堆肥化処理は、家畜排せつ物の処理として我が国で最も一般的に行われている方法である。しかしながら、処理の過程からはアンモニアや硫黄化合物類を主体とする高濃度の臭気が発生し、畜産由来の悪臭問題の主な原因に数えられている。このため、堆肥化処理からの臭気発生に対する有効な対策技術が求められている。
本研究では、微生物の直接添加による堆肥化過程でのアンモニア発生低減技術の開発を目的として、アンモニウム資化能が高く、排せつ物の堆肥化処理に適応しうる微生物の分離・選抜を行った。また、選抜した微生物を添加して豚ぷんの堆肥化試験を行い、アンモニア発生の低減を評価した。
成果の内容・特徴
1.
当研究所で製造した堆肥より、アンモニウム態窒素資化能の高い細菌TAT105株を分離した。酵母エキス-アンモニウム平板培地(酵母エキス0.5%、NH4Cl0.54-8.03%(100mM-1500mM)、Na2HPO40.1%、CH3COONa0.1%、KH2PO40.03%、寒天3%、pH7.0-7.2、培養温度30-70℃)を用いた培養条件の検討から、TAT105株は65℃までの生育が可能であり、高いアンモニウム耐性(~1200mM)を有していることを検証した。また、性状分析および16SrDNAの配列解析から、TAT105株はBacillus
pallidusに近縁のBacillus属細菌と推定した。この菌株は高アンモニウム平板培地(上記培地のNH4Cl濃度を2.68%(500mM)としたもの)上で特徴的なコロニーを形成する(図1)。
2.
豚ぷん・おが屑混合物に液体培養したTAT105株を混合(混合後の菌数:≒107CFU/g 乾物)し、小型堆肥化試験装置(かぐやひめ、富士平工業)に充填して堆肥化試験を行った(試料充填量4kg、通気量0.45L/min)。3回の試験を通して、排気中アンモニア濃度は、菌添加区では菌無添加の対照区に比べて低い値で推移した(図2)。また、堆肥化期間中の試料からの窒素損失は、菌添加区では対照区に比べて40%程度抑えられた(図3)。
3.
堆肥化試験中に上記の高アンモニウム平板培地を用いて、55℃、12時間の培養でのコロニー形成により、試料中のTAT105株の計数を行った。添加区では生じたコロニーの大部分がTAT105株と判断された。菌数は堆肥化初期に顕著に増加し、堆肥化終了時まで7×107CFU/g乾物程度を維持していた。一方、対照区にも類似のコロニーが確認されたが、菌数は添加区に比べて低く、終了時で添加区の1/20程度であった(図4)。このことから、添加区ではTAT105株が堆肥化過程で顕著に増殖し、これによってアンモニアの発生が低減されたものと考えられた。
成果の活用面・留意点
1.
微生物添加による堆肥化処理からのアンモニア発生低減技術の基礎的な知見を提供するものである。
2.
今後、実際の堆肥化処理での微生物の利用条件を検討する必要がある。
図表1 226820-1.gif
図表2 226820-2.gif
図表3 226820-3.gif
図表4 226820-4.gif
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