LCA手法により評価した肉用牛肥育の環境影響

タイトル LCA手法により評価した肉用牛肥育の環境影響
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 荻野暁史
賀来康一
島田和宏
発行年度 2003
要約 ライフサイクルアセスメント (LCA)手法を用いて肉用牛肥育の環境影響を評価したところ、地球温暖化への寄与が最も大きいのは畜体から発生するメタンであり、酸性化では化学肥料とふん尿由来のアンモニアが主要な原因物質である。
キーワード 畜産環境、環境影響評価、肉用牛、ライフサイクルアセスメント
背景・ねらい  ふん尿問題等の畜産環境問題を改善するためにはまず環境影響を評価することが重要であるが、畜産における環境影響評価手法はまだ確立されていない。近年、製品および産業・社会システムの評価法としてライフサイクルアセスメント
(LCA)が注目されている。LCAは1997年にISO14040として国際的に標準化された手法であり、製品・サービスについて使用段階など特定のプロセスだけでなく、原料の採取から廃棄段階までの全てのプロセス(ライフサイクル)からの様々な環境負荷を考慮して総合的に評価する手法である。そこでLCAを用いた畜産の環境影響評価手法の開発を視野に入れ、肉用牛肥育についてのケーススタディを行いその環境影響を評価した。
成果の内容・特徴 1.
解析対象とした肉用牛肥育システムは、8か月齢の黒毛和種子牛 (265kg)を購入して28か月齢 (727kg)まで肥育するものとし、肥育期間中に摂取する飼料の生産および輸送、(畜舎における)家畜管理、畜体、ふん尿堆肥化の各ステージに関する環境負荷を考慮した (図1)。畜舎等の生産財に関する負荷は含めていない。機能単位は牛1頭とした。データは、化石燃料の燃焼や輸送等の一般的なものについては市販のLCAソフトウェアに付属するインベントリデータベースのものを、堆肥化過程からの環境負荷ガス等の畜産に特有なものについては文献値を用いて環境負荷を算出した。
2.
肉用牛肥育期間における1頭あたりの摂取飼料総量は濃厚飼料と粗飼料についてそれぞれ4742kgおよび1246kg (いずれも現物量)であり、ふん尿中窒素総量は97.6kgであった。
3.
肉用牛肥育において地球温暖化への寄与が最も大きいのは家畜(消化管での嫌気性発酵)由来のメタンである (図2)。飼料生産からの影響ではその多くを化石燃料由来の二酸化炭素 (CO2)が占めており、また、ふん尿処理では亜酸化窒素 (N2O)の影響が大きい。
4.
酸性化への寄与が大きいのは飼料生産とふん尿処理、続いて家畜管理のステージである (図3)。ふん尿処理と家畜管理では、ふん尿由来のアンモニア (NH3)が主要な原因物質であり、飼料生産においては圃場から発生する化学肥料由来のNH3の影響が大きい。
5.
エネルギー消費量が大きいのは飼料生産、次に飼料輸送であり、肉用牛肥育で消費されるエネルギーのほぼ全てを両ステージが占める (図4)。
成果の活用面・留意点 1.
 日本の肉用牛肥育として一般的な条件を設定したが、今回の結果はこの条件の下に得られたものであり、条件が変われば環境影響量も変化しうることに注意する必要がある。
図表1 226880-1.gif
図表2 226880-2.gif
図表3 226880-3.gif
図表4 226880-4.gif
カテゴリ 肥料 データベース 肉牛 評価法 輸送

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