寒冷地での栽培に向く中晩生イタリアンライグラスの市販品種

タイトル 寒冷地での栽培に向く中晩生イタリアンライグラスの市販品種
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2001~2003
研究担当者 上山泰史
米丸淳一
久保田明人
発行年度 2003
要約 寒冷地で冬季に雪に覆われる期間が60日程度ではヒタチヒカリとアキアオバが、80日程度ではナガハヒカリが安定多収で、既存普及品種よりも20%程度増収が図れる。
キーワード イタリアンライグラス、飼料作物育種、越冬性、収量性
背景・ねらい イタリアンライグラスは良質で収量性に優れる1年生牧草であるが、北東北など寒冷地向け品種が育種されていないため、作付けが僅かにとどまっている。しかし、積雪地及び温暖地向け品種は多数育種されており、なかでも中晩性品種の多くは一定の越冬性が付与されている。そこで、寒冷地で越冬させて栽培可能な品種を越冬性と生産力から検討する。
成果の内容・特徴
  1. 2003年は2002年よりも牧草が雪に覆われる積雪10cm以上の期間が長く、1月以降の低温(表1)のため、越冬時の葉枯れが著しく、出穂日が遅く、収量が低い(表2)。生産力検定試験での越冬時の葉枯れは褐色小粒菌核による雪腐病が主たる要因である。
  2. 青森県以外の北海道・東北地域で奨励または準奨励品種となっているマンモスBと比べてナガハヒカリなど北陸農試育成の耐雪性品種・系統は越冬時の葉枯れが明らかに少ない。2倍体品種・系統とマンモスBは越冬時の葉枯れが甚だしい(表2)。
  3. 乾物収量においてはナガハヒカリの他に、温暖地向け品種のヒタチヒカリやアキアオバもマンモスBやエースより明らに高い。特に、冬季雪に覆われる期間が短い2002年にはヒタチヒカリが多収で、耐倒伏性にも優れる(表2)。
  4. 個体植でも冬季雪に覆われる期間が短い2002年にはヒタチヒカリとアキアオバがナガハヒカリよりも地上部個体重が有意に大きく、低温で積雪期間が長い2003年にはナガハヒカリが安定して越冬し、地上部乾物個体重も同等になる(図1)。
  5. 以上のことから、寒冷地で冬季雪に覆われる期間が60日程度ではヒタチヒカリとアキアオバが多収であり、80日程度では耐雪性に優れるナガハヒカリが安定して越冬する。このような越冬条件に合致する地域で、これらの品種を導入することによって、イタリアンライグラスの反収の増大が図れる。また、耐寒・耐倒伏性多収品種育種のため、ヒタチヒカリとナガハヒカリなどの越冬性系統が有用な素材となる。
成果の活用面・留意点
  1. 北東北など冬季に連続して80日程度まで雪に覆われる地域においてイタリアンライグラスを栽培する場合の適品種選定のために利用できる。
  2. 友系及び高系系統は試験のための系統で、現在及び今後も市販される見込みはない。
  3. 雪に覆われる期間がさらに長い多雪地帯では、ナガハヒカリ以上の越冬性が安定栽培のために付与される必要がある。
図表1 226940-1.gif
図表2 226940-2.gif
図表3 226940-3.gif
カテゴリ 育種 イタリアンライグラス 飼料作物 品種

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