タイトル | 牛胚移植普及の条件と地域的対応 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 2002~2004 |
研究担当者 |
宮路広武 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 牛胚移植の普及は、胚移植に必要な3つの生産要素の確保と体系化が条件となる。牛胚移植は、各生産要素の賦存条件と、その条件に対応して不足する生産要素を確保するための支援・取り組みにより普及が実現された。 |
キーワード | 牛胚移植、生産要素、普及、肉用牛、乳用牛、技術評価 |
背景・ねらい | わが国では、黒毛和種を筆頭とする品種間価格差、黒毛和種における血統間価格差の存在を経済的要因として、主に黒毛和種子牛生産を目的に牛胚移植が普及した。牛胚移植の普及は、経済的要因だけではなく、地域ごとの各種条件の相違によっても規定されてくる。そこで、牛胚移植普及先進地域での普及過程の分析を通して、牛胚移植普及の条件と地域的対応を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 胚移植を用いた子牛生産を行うには、胚、レシピエント、移植技術の3つの生産要素が必要である。地域ごとの賦存条件の相違の中で、各生産要素をどの様に確保し、体系化していくかが牛胚移植普及の条件となる。(図1) 1) 胚の確保は、購入胚か自家保有ドナ-を用いる方法がある。購入胚は、ドナ-の賦存状態に関係なく胚を確保出来るメリットがあるが、価格、量、供給範囲など、供給元、種類により利用条件が異なる。自家保有ドナ-の利用は、購入胚より低コストで胚を入手出来る可能性があるが、ドナ-と採胚機関の存在が不可欠である。 2) レシピエントの確保は、自家保有牛か他農家のレシピエントを用いる方法がある。他農家のレシピエント利用は、規模拡大効果を得られるが、契約の確立と継続が難しい。黒毛和種子牛生産を目的に胚移植を行う場合、レシピエントの品種によって期待される経済的効果の大きさが異なり、レシピエント確保に影響を与える。 3) 移植技術者は、胚移植に関する情報の農家への重要な供給者である。また、繁殖管理の指導などト-タルな技術者の水準が、胚移植を用いた子牛生産の安定性と経済性に影響を与え、農家レベルへの普及・定着に大きな影響を与える。 2. 牛胚移植の普及は、各生産要素の賦存条件と、その条件に対応して不足する生産要素を確保するための支援・取り組みにより実現された。(図2) 1) 黒毛和種生産後発地域など、ドナ-の存在しない地域での胚の確保は、ドナ-導入か購入胚利用の選択になる。普及地域では、公的機関などがドナ-を導入し胚の供給を行う方式や事業でのドナ-導入を行い、ドナ-導入に伴う農家負担の軽減を図り普及を実現した。 2) 自家保有ドナ-の活用には、採胚技術・設備が必要である。普及地域では、公的試験場などが採胚施設を解放するなど、採胚を支援し普及を実現したが、採胚技術・設備を有する先駆的獣医師・民間機関の存在(賦存状態)も普及の要因である。 3) 他農家のレシピエントを用いる場合、契約の確立・継続には、借り方と貸し方双方が納得出来る条件の設定が不可欠である。移植・採胚に直接携わる獣医師など、第三者が仲介することで、円滑な推進が可能になる。 4) 胚移植の技術的特徴は、移植技術・採胚技術という、技術者が有するテクニックが必要な点である。技術の先進性を背景に、新しい技術を生産現場に用いたいという技術者の取り組みも普及の要因であり、特徴的である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 牛胚移植普及後進地域での普及を図る際の参考になる。 2. 牛胚移植普及の条件、地域的対応は、主要なものを示したものであり、全ての条件、 対応について示したものではない。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 規模拡大 低コスト 肉牛 繁殖性改善 品種 |