タイトル | 草地飼料畑では堆肥による重金属の投入量が作物収奪量よりも多い |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 2000~2004 |
研究担当者 |
近藤 煕 松波寿弥 森 昭憲 川内郁緒 寳示戸雅之 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 我が国の草地飼料畑における銅、亜鉛、カドミウム、鉛の堆肥による投入量は、牧草および飼料作物による収奪量より約4~6倍多い。10~100年の時間スケールで、堆肥由来の銅、亜鉛、カドミウムの土壌蓄積に注意が必要である。亜鉛では既に土壌分析値に蓄積傾向が現れている。 |
キーワード | 永年草地、重金属、飼料作物、堆肥、土壌肥料、牧草 |
背景・ねらい | 家畜排泄物が還元される草地飼料畑の一部では、養分の過剰投入が問題となる。銅、亜鉛、カドミウム、鉛等の重金属に関して、我が国の草地飼料畑における循環経路や蓄積状況についての現状が把握されていない。そこで、堆肥、牧草および飼料作物、土壌の元素濃度実測値をもとに、我が国の草地飼料畑における重金属の堆肥による投入量と牧草および飼料作物による収奪量を推定した。 |
成果の内容・特徴 | 1. 全国から収集した堆肥(n=127)の元素濃度実測値(中央値)と「家畜飼養者による堆肥化利用への取組状況調査報告書(農水省統計情報部)」の堆肥生産量(畜種別)、草地飼料畑への堆肥の利用割合(畜種別)に基づき、草地飼料畑への銅、亜鉛、カドミウム、鉛の堆肥による投入量を推定した(表1、図1)。銅、亜鉛の場合、豚堆肥からの投入量が多い原因は濃度が高いため、牛堆肥からの投入量が多い原因は施用量が多いためである(表1)。カドミウム、鉛の場合、牛堆肥の施用量が多いため、牛堆肥からの投入量が多い(表1)。 2. 全国から収集した牧草および飼料作物(n=115)の元素濃度実測値(中央値)と「作物統計(農水省統計情報部)」の作付面積(作物別)、収穫量(作物別)に基づき、草地飼料畑における銅、亜鉛、カドミウム、鉛の牧草および飼料作物の吸収による収奪量を推定した(図1)。投入量は収奪量よりも約4~6倍多く、収奪量の投入量に対する割合は、銅:19.1 %、亜鉛:16.8 %、カドミウム:22.8 %、鉛:22.8 %である(図1)。 3. 全国から収集した草地飼料畑の表層土壌(n=114)の元素濃度実測値(中央値)に基づき、表層土壌の容積重を1 Mg m-3、表層土壌の厚さを0.1 mと仮定して、草地飼料畑の表層土壌の銅、亜鉛、カドミウム、鉛の現存量を推定した(図1)。表層土壌中の現存量は、銅:29200 g ha-1、亜鉛:110000 g ha-1、カドミウム:262 g ha-1、鉛:20100 g ha-1である(平成12年度現在)。 4. 投入量と収奪量の差が、草地飼料畑の表層土壌に蓄積すると仮定すると、堆肥由来の重金属の表層土壌における年間の増加速度は、現存量に対して、銅:0.70 %、亜鉛:0.89 %、カドミウム:0.68 %、鉛:0.05 %である。銅、亜鉛、カドミウムに対して、10~100年の時間スケールで、土壌蓄積に対する注意が必要である(図1)。 5. 全国から収集した草地飼料畑の表層土壌(n=114)の亜鉛濃度実測値(中央値 110 mg kg-1)は、日本土壌のバックグラウンド値(n=78、中央値 95.6 mg kg-1)より明らかに高濃度域に分布する(図2)。このように、亜鉛では既に蓄積傾向が分析値に現れている。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 我が国の草地飼料畑における表層土壌の重金属濃度のモニタリングと家畜飼料中の重金属濃度の低減化が重要であることを示す基礎資料である。 2. 我が国における家畜排泄物の発生量の約2割が堆肥化され、その一部が、畜種ごとに異なる割合で、草地飼料畑へ投入されると推定した上記統計資料に基づく試算結果である。統計数値が得られないスラリー等からの重金属の投入量は考慮していない。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 肥料 飼料作物 土壌管理技術 豚 モニタリング |